日曜は家族で房総に。鋸山に登り、海岸で貝など拾って帰った。覚悟はしていたが、やはり往復で9時間くらい運転することになり、現地滞在時間より遥かに長く車中で過ごすことになる。最近はアクアラインを通るが、バカみたいに通行料が高い。しかも昨日はガソリンスタンドで給油し、ほんの少し走ったところで、シートベルト違反で切符を切られた。たまたまガスを入れた直後だったからし忘れてただけなのに! しかも指紋までとられた。「判子がないのなら」とか言っていたが、サインで十分だろうに。シートベルトをしてなかっただけで指紋だなんて信じられない。10数年前にバイクで「車線変更違反」をしたとかで切符を切られて以来だ。

房総半島の太海に中学3年の春休みに数人の友達と野宿をした。日帰りの予定だったが、なんとなく帰り難く、私ともう一人の友達が「この辺で野宿しよう」と言い出し、皆で薪を集め、岩のくぼみを簡易なねぐらにしたのだった。交代で焚き火番を決めて、一晩中火を焚いたが鼻の穴が煤で真っ黒になった――。面白かったので、爾来毎年のように、館山の南の根本海岸などにキャンプや海水浴に行っていた。
だが、海ばかり行っていたので、鋸山に登るのは初めてだった。鋸山は標高300メートル強だが、上3分の1ほどが大きな岩盤が露出したような感じになっていて、江戸時代から凝灰岩の採石が行われていた。山腹が綺麗に矩形に切り取られている場所があったり、垂直に岩壁を切り落とした切り通しがあったり、なかなか面白い景観なのだ。昭和50年代まで採石が行われていたらしく、石切り場跡には重機の残骸が放置されていた。石切り場の岩壁の高いところに石材会社の社員が彫ったらしき「安全第一」の文字が残っているが、よくみると文字が不完全なままになっている。完成前に悪いことがおきたのでないことを願うが。


    



その後、さらに南下して富浦の手前の海岸で貝殻を拾った。富浦も思い出深い場所で、何度もキャンプしている。初めて訪れた際に、街道沿いにあった理髪店か何かのウインドーにアグネス・ラムのポスターが貼ってあったのを目にしたことを思い出した。25年ほど前に食材を買ったスーパ−、ODOYAもまだあるではないか!
二年前の初夏に行った際、偶然、桜貝など珍しい貝殻が沢山ある浜に出たので、同じ場所に行ってみようと思っていたが、残念ながら記憶が曖昧でわからなかった。が、それでも数えきれないくらい多くの種類の貝殻がある。貝の形や模様は面白い。石だけでなく、貝まで集め始めたらきりがないので、自重しているが。現在、貝類は猛烈なスピードで絶滅しているらしい。私よりむしろ嫁と娘が浜で貝や石を拾うのが好きで、放っておけば日がな一日拾っている。私はだいたい、下を向きつづけているのに疲れてしまうのだが。

  

アクアラインが出来る前は京葉道路を経由していた。東京湾岸沿いにぐるりと回らなければならないが、道としてはそっちの方が面白い。木更津近辺の工業地帯を夜中に通ると、人家の無い海岸線沿いに煌煌と明かりがつき、高い煙突から火が出ているようなコンビナートや化学工場が延々と続き、殺伐とした雰囲気なのだが、それもまた結構好きだった。つげ義春の「海辺の叙景」の舞台も近いのだが、とても浜に出て泳ぐような環境ではない。房総在住の方に失礼を承知で言うが、房総の幹線道沿いの景観には独特な荒廃感がある。付け根の諸都市沿いはモーテルや安っぽい食堂やパチンコ屋など、南に下ると、「ジャングル風呂」やら「フラワーパーク」やら、いずれも東京者の小銭を目当てに作ってみましたという感じなのだが、今は長引く不況で、一層本格的な荒廃感がある。廃墟になったドライブインなども多いが、大きなフラワーガーデンがつぶれて、巨大な温室の中が草茫茫のまま放置されていた。