ウナギ問題

ヨーロッパでウナギの稚魚の輸出が大幅に規制されることになって、もう安いウナギは食べられないの? と、やっている。新しい農林水産大臣が、稚魚が成魚になるには二、三年かかりますから、なんとか完全養殖の実現を目指して云々と言っていたが、そんなにすぐに完全養殖ができるとも思えない。ウナギは謎の魚で、遠い南洋の深ーい海溝で産卵し、産卵場所も、養魚が何を食べているのかも、つい最近まで全くわかっていなかった。海を渡ってきて、河口まで来た養魚をつかまえて養殖していたのだ。この話をかつて父親から聞いたときは、ウナギ=養殖というイメージが強かったので、そんなアホな、と半信半疑だった。昨日もラジオを聴いていたら、「ウナギは遠い海の底で産卵してるらしいよ」というコメンテーターに対して、女性パーソナリティーが「それって都市伝説とかじゃないんですか?」と反応していた。無理もないと思う。これだけ日常的に目にしていて、スーパーでも結構安値で売っているものが、そんな「謎」の生き物だなんて、ちょっとピンとこない。でも、海洋生物の世界、海の中は謎だらなのだ。どうして近年イワシが激減してしまったのか、どうしてカツオの通り道が離れてしまったのかなど、はっきりした理由はわかっていないようだ。
日本は水産資源豊富なように見えるけれど、山奥の温泉宿でも刺身が並ぶようなここ二、三十年の環境は、世界中から水産資源を買い付け、それでも足りなければ、タイやスズキに「似た」感じの食感の魚などを遠くアフリカや南米の河川に求めるという無茶な手法で維持されてきた面がある。脂ののりきったでかいエンガワはヒラメではなく、体長2メートルにもなる巨大な魚の「それ」だったりする。池袋の回転寿司屋で、妙に柔らくてしかも安いアワビがあるなーと思っていたが....たぶんアワビじゃないんだろう。日頃食べている魚介類のほとんど、どこで採れているどんな魚なのか、ほとんど知らないのだ。
近年世界各国で水産資源を保護しようという動きが強まってきたため、世界中の魚介類が日本に集まるような環境は維持できないだろう。これまでも間接的に漁獲量規制に違反しつつなんとかやってきた面もあるようだ。さらに海水温の変化などで、回遊魚が日本近海まで来なくなったり、あるいは巨大なクラゲの大群が押し寄せたり、入り江がヒトデで埋め尽くされてアサリが壊滅など、様々な事が起きていて、近海の漁業もいろいろとピンチなのだ。昨日は南洋から巨大なエイがやってきて、近海で大繁殖し、やはりアサリが壊滅というレポートをしていた。また、比較的深いところに棲む大きな魚の水銀濃度の問題などもある。最近、日本人の魚食離れが顕著だと憂うような報告があったが、食べたくても食べられなくなる時代が近づいているような気がする。