マヤ遺跡-1

今回、はじめは一人でユカタン半島のマヤ遺跡を数多く回った。これまでに二回、主な遺跡を巡ったことがあるので、今回は比較的マイナーな遺跡を見て回ったが、改めてマヤ文明圏のスケールの広さを実感した。マヤ文明都市国家の集合体で、最後まで統一的な規模の国家などを作ることなく衰微していったが、それぞれの都市の建築に費やしたエネルギーは並大抵ではない。結局、その過剰さが環境破壊へとつながり、衰退への道筋を用意したのでもあるが。
今回訪れたのは、コバ(Coba)、エクバラン(Ekbalam)、バランカンチェ(Barancanche)、チチェンイッツァ(Chichen Itza)、マヤパン(Mayapan)、ヂビルチャルトゥン(Dzibilchaltun)、ラブナ(Labuna)、ホチョブ(Hochob)、シュラパック(Xlapak)、エヅナ(Edzna)、バラムク(Balamku)、カラクムル(Calakmul)、ベカン(Bekan)、ホルミゲーロ(Hormiguero)、シュプィル(Xpujil)、コフンリッチ(Kohunlich)、チカンナ(Chicanna)、リオ・ベック(リオ・ベック)、ボナンパック(Bonampak)、ヤシュチラン(Yaxchilan)、パレンケ(Palenque)、エル・タヒン(El Tajin)

メキシコのマヤ遺跡で最も高いピラミッドを有するコバは初めて訪れたが、観光地カンクンからも遠くない為、かなりの混雑だった。酷い高所恐怖症なので、果たしてピラミッドに上れるか、いや、下りられるどうか不安だったが、思ったよりも平静な状態で下りられた。やはり、かなり急とはいえ階段がついていると、怖くはあるが、冷静でいられる。(一歩足を踏み外したら、死ぬ確率大なのだが)。コバはかなり大規模な遺跡で、まだ全体が修復されたわけではない。一週するだけで、かなりの時間がかかるが、有名な大神殿以外にも、丸みのあるウシュマルタイプの小型神殿など、見所は多かった。コバは「風に揺れる水」という意味で二つの湖に隣接している。かなり大きなワニがいた。

エクバランはユカタン半島北東の遺跡で、カンクンからも遠くないのだが、これが素晴らしくいい遺跡だった。15年前にユカタン訪れた際に購入したパンフにはまだ完全には修復されていない神殿の写真が写っているばかりだったが、その後とんでもなく保存状態の良い漆喰彫刻が現れた。木に覆われていたため、風化せずに残っていたという。色は失われているが、怪物の口を模した部屋で、彫像もほぼ完璧な形で残っている。

バランカンチェは鍾乳洞内部の礼拝所で、大きな鍾乳石を木にみたてて、周囲に土器などが奉納されている。前世紀半ばまで、地元の祈祷師しか知らない場所だった。ここがとんでもない湿気で、入り口付近からカメラ全体が結露。拭いても拭いても結露。まともに写真が撮れる環境でなかった。洞窟の奥には小さな小さなトウモロコシ挽き=メタテが数多く奉納されている場所もある。マヤ人の神話では、人はトウモロコシから作られた。

チチェン・イツァとパレンケは15年ぶりの再訪だったが、立ち入り禁止になっている場所が多く驚いた。特に、チチェン・イツァのピラミッドと戦士の神殿に上がれなくなっていることが少々、ショックだった。ピラミッドは観光の目玉なので、手すりをつけて再び上がれるようにするとも言われているが、訪問者の数も倍増しているので、どれくらいの耐久性があるのか、政府も自信がないんではないだろうか。チチェンの壁面レリーフなどが黒いカビでかなり状態が悪くなっているのが気がかりだった。球技場には有名な、選手の首がはねられている場面のレリーフがあるが、ここもかなり黒ずんでいて、見えにくくなっている。戦士の神殿の一階部分には戦士像、捕虜像を刻んだ柱が林立しているが、ここも立ち入り禁止、上部には生贄の儀式用の人型の台座チャクモールや羽毛のある蛇をあしらった柱など、見所が多いのだが、下からは全く見えない。これからずっと立ち入り禁止にするのだろうか。