エル・タヒンとボラドーレス

古代トトナカ人の玩具

オルメカの「石頭」をたくさん見た後、北上してポサ・リカに宿泊。翌日はトトナカ人の祖先が作った大遺跡エル・タヒンに。世界遺産ということもあり、かなりの人出だった。
  

この遺跡、とくに「壁龕のピラミッド」とよばれる、壁面全体に矩形の窪みがある神殿は、他のメキシコの遺跡にないユニークなスタイルだ。どこか東洋的な趣がある。遺跡を作った人々は「笑う人」と呼ばれる、これも独特な人物像を数多く残した。三頭身の笑っている土偶などが多いので、全体にかわいらしい印象があるが、球技場にはメキシコの古代文化の例に漏れず、心臓を取り出す生贄の儀式の絵が残されている。
ハラパにはトトナカ人の遺物も数多く展示されていたが、人形が並んでブランコに乗っている子供の玩具が可愛らしかった。さらに面白いのは、車輪がついた玩具だ。スペイン人が入ってくる前、メキシコと周辺の世界には車輪の付いた道具が存在しなかった。あれだけ多くの建築物を造り、遠くから石材などを大量に運んだ人たちが車輪のついた子供のオモチャをつくりながら、それを道具として応用することに思い至らなかったというのが、なんとも不思議だ。また、冶金技術もなかったため、長らく石器-青銅器-鉄器という、オーソドックスな文明の発展モデルからすれば「石器時代」のままであったことになり、ユーラシア大陸の諸文明に比して劣っていたかのような扱いを受けていた。
 

遺跡の外でトトナカ人の儀式「ボラドーレス」を行っていた。高さ30メートルほどのポールに5人の男が登り、足にロープを結び、逆さで、ポールに巻き付けたロープをほどく形で4人が回りながら降りる。5人目はポールの先端で笛と太鼓で演奏を続ける。元は宗教的な儀式だったが、華やかなので、観光用に年中各地で行われている。

これにて一人での遺跡巡りは終わり。この日のうちにメキシコ・シティーに飛び、家族と合流した。