先週と今週、NHKの「地球ドラマチック」の再放送で、本放送のときに見られなかったストーンヘンジの特集番組をようやく見ることができた。
ソールズベリー平原に、実物大のオリジナルのストーンヘンジのレプリカを設置する話だ。素材は発泡スチロールだが、映画などのセットを造るプロダクションに制作を依頼し、かなりリアルな仕上がりになっていた。今は風化して表面が鼠色になっているサーセン石も、割ってみるとベージュ色をしている。設置当時は明るいベージュ色だったことを考慮して再現していた。それぞれの岩のサイズはもちろん、くびれや溝なども結構リアルに仕上げてあり、べこべこの発泡スチロールには見えない。
これを夏至の日までに設置して、実際に太陽光があたるとどうなるか見てみるという趣向だったが、興味深かったのは地軸の傾きの誤差を修正して、設置当時の太陽の位置を、人工的に再現した実験だった。ここ数年、ストーンヘンジは夏至の日の祭りでなく、冬至の日の儀式をメインに造られたのではないかという話をよく聞くが、実際の実験でも、夏至の日の日の出よりも、冬至の日の日没の光が「効果的に」演出される仕組みになっているように見える。現在は多くの岩が倒れているので、夏至の日の出がダイレクトに遺跡の中に入るけれど、かつては光が入って来る道筋上に大きな岩が並んでいて、どこか光が分散される印象だ。それに比べて、冬至の日没の光は三石塔と呼ばれる石組みの間から遺跡の中程に溢れ出るように入る。アイルランドの大きな通路付きのマウンド状墳墓ニューグレンジが、冬至の朝日が真っすぐに石室内に入るように設計されているということを以前書いたが、スコットランドのオークニーにあるメーズホウの墳墓や、スコットランド北東部に集まるクラバー・ケァン型の石積み墳墓などは入り口が冬至の日没方向に設置されている。冬至という一年で最も力のない太陽が沈む方向に、死者の国があると考え、葬送の儀礼、あるいは祖霊信仰の儀礼用に設計されたのではないかと推測することは、それなりに妥当性があると思う。
現在、毎年夏至の日の日の出を見るために、3万近い人たちがストーンヘンジに集まる。ものすごい数だ。大変な喧噪に違いない。私はむしろ、冬至の日の日没時に行ってみたいと思うのだけれど、イギリスは冬は多くの観光施設が休みで、ストーンヘンジも遺跡の中に入る特別なサービスはしていない。
発砲スチロールで造ったレプリカは番組撮影後、すぐに撤去されてしまったようだが、本物の岩を使ったレプリカを造ろうという計画が、おそらく進行中だ。
以下に発泡スチロール製のレプリカの写真が。
http://www.flickr.com/photos/chough/32886083/in/set-853247/