著書『ストーンヘンジ──巨石文化の歴史と謎』刊行

筑摩書房から『ストーンヘンジ──巨石文化の歴史と謎』(筑摩選書)を刊行しました。ブリテン諸島の巨石文化については、17年前に『巨石』(早川書房)という大判の写真文集を出したのですが、ストーンヘンジに関しては刊行後に本格的な調査が複数行われ、さまざまなことがわかってきました。建造年代も修正されましたし、1920年代に発掘された人骨もあらためて分析されました。これによって、『巨石』の記述があっというまに古くなってしまった面があり、いつか改訂したいと思っていましたが、今回、ストーンヘンジだけで一冊まとめることができました。

専門家でもないのに、考古学的な記述がメインという本になりましたが、考古学プロパーは扱わないだろう文化史的側面、ストーンヘンジがどれだけオカルトや偽史のシンボルになってきたかなどについても書いています。

 

【目次】

はじめに

第一章 ストーンヘンジはどういう遺跡か
ストーンヘンジはどのような姿だったか/精緻な加工技術/二つの石の来歴/謎の多いブルーストーン/堀と土手、円形の囲い地/ストーンヘンジ建造と改造の歴史
コラム ストーンヘンジ未完成説/コラム どうやって運び、建てたのか?

第二章 ストーンヘンジを見る目の歴史
英雄物語の中のストーンヘンジ/高まる古代世界への興味/作ったのはローマ人かサクソン人かデーン人か/ケルトの祭司ドルイドの神殿としてのストーンヘンジ/「ドルイド教」の教祖/「真の宗教」を受け継ぐ者としてのドルイドストーンヘンジの形に基づいた町づくり/全てはドルイドの名のもとに/愛国主義を支えるストーンヘンジドルイドのイメージの世俗化/美しく、ピクチャレスクなものとしてのストーンヘンジストーンヘンジのガイドたち
コラム 巨石と天体の関係/コラム ヒュペルボレオイとブリテン

第三章 発掘の時代
石と青銅と鉄と/新たな崩壊、本格的な発掘調査/「わかったことはとても少ない」/上空から見えたもの/工務局対ドルイド団体/放射性炭素による年代測定/大規模な発掘と修復/建造過程と年代の再構成/ミノア文明の落とし子?/幻の旅人を探して
コラム 巨石とフォークロア、オカルティズム

第四章 巨大な複合施設の中のストーンヘンジ
さらに遠い過去へ/農耕文化の伝搬/チェダーマンと狩猟採集社会/ストーンヘンジ周辺の景観/一万年前のミッシング・リンク/大きな家と深い穴/世界最古の家系図/集いの場と戦乱と/巨大な居住地/石は死者のため、木は生者のため/小さな家、囲炉裏と飾り棚/二つのウッドサークル/生者の領域と死者の領域をつなぐもの/冬至の大規模な饗宴/短命に終わった居住地/巨大な穴の列は何か/道はずっと前からそこにあった
コラム ストーンヘンジと音/コラム パワースポット、レイライン、癒やしの力

第五章 始まりの地から終末へ
西ウェールズから運ばれた遺骨/ブルーストーンの故郷へ/ストーンヘンジの前身か/海路説、陸路説に決着はつくか/新石器の暗黒時代?/新たな文化の始まり/北の果ての巨石の都/ボイン渓谷の巨大施設/「フレンチ・コネクション」/巨大なストーンサークルの時代/石の文化が滅びるとき/権力がモニュメントを生むのか?/壮大な共同作業/大陸から来た男/大きな爆弾
コラム 巨石時代の芸術とシンボル

あとがき/参考文献/図版出典一覧