怖い絵

いろいろなところで高く評されていた中野京子の『怖い絵』という本を、半分ほど読んだところで、温泉に行く途中、特急の中に置き忘れてきてしまった!
良く知られた名画20点の主題、画家の人生にまつわるダークな側面を紹介しているので、「怖い」ということなのだ。半分までしか読んでないが、なかなか面白かった。購入したのは、表紙にラトゥールのトランプをしている人々の絵が使われていたからだ。男のいかさまをメイドが女主人に告げていて、女主人が「ちょっと、そこに隠してるカードを出しなさいよ」というように指を出しているという絵で、私は子供の頃、この絵が怖かった。家にあったトランプの本にこの絵が載っていたのだが、女主人の顔が怖かった。西洋の肖像画で、多くの(日本の)子供が苦手な顔というのがあるように思う。クラナッハの描くつり目の女性とか、ファン・アイクの「アルノフィニ夫妻の肖像」とか。ラトゥールのこの絵の女主人の顔もその手の絵なので、最初はてっきりそういう「怖さ」に関する本なのかなと。
結局、件のラトゥールの絵に関する話は本の末尾だったので、この絵の「怖さ」がどんなものだと言っているのかわからずじまい。もう一度買うのもちょっと...迷う。
ところで、ムンクの「思春期」という絵の話の中で、有名なムンク「叫び」の絵は「悲鳴を上げる人間」という記述があったが、この絵は「自然を貫く、果てしない叫び」に畏れおののき耳を塞ぐ人物の絵なのだということを、年末のクイズ番組で知った。つまり、この人物は怖がっているだけで、叫んでいるわけではないのだ。ムンクは神経を病んでいてこの絵の元になった体験を日記に記していて、これは有名な話だというから、この辺は美術評論としては大きな減点なのだろう。

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