ティム・ハーディンの初期の曲

気がつくと、仕事場の庭の梅が咲いている。義母が亡くなった後、時々カーテン越しに庭に来る猫を見ることはあっても、窓を開けて上を眺めることなく過ごしていたので、全然気がつかなかった。彼女の最後の春に、友達を集めて梅を見つつ句会を開いていたことを思い出した。今年の冬は本当に寒い。春よ早く来てくれ。

以前にも書いたTim Hardinの初期のアルバムを数枚聴いた。これが驚くほど良く、特に二枚目とライブを繰り返し聞いている。知っている曲がいくつか入っていることに驚いた。二枚目に入っているIf I were a carpenterとRed Balloonはスモール・フェイセズがカバーしていて、前から好きだったのだが、この人の曲だったのか。If I were a carpenterは「もし僕が大工だったら....、もし僕が流れの鍛冶屋だったら...、それでも君は僕と結婚してくれるかい」という。イギリスやアイルランドのトラッドに、「私は鍛冶屋の男に惚れちゃった」あるいは「流れ者の男に惚れちゃって、あの娘は行ってしまった」という感じの歌はよくあるように思うが、この歌は「もし僕がそうだったら、そして、君がいいとこのお嬢さんだったら、ついて来てくれるんだろうか」という歌だ。アルバムジャケットは窓辺に彼とお腹の大きな奥さんが写っているものだが、奥さんは当時テレビドラマなどに出演していた美人女優だったようで、「本当に僕でもいいのかな」と言いつつ、結婚して、子どもも出来たのだが、3曲後のLady came from Baltimoreでは、「僕は貧しい泥棒で、彼女の家から金を奪って逃げるつもりだったけど、彼女に心底惚れちゃって、結婚した。でも、彼女の父親は僕が金目当てで結婚したと疑っているし、彼女の家には泥棒除けの塀があって、彼女も僕が泥棒だったという思いを拭えなかった」という。そんなに状況がややこしかったのか、彼自身の心持ちの問題だったのか、よくわからないのだが、曲は素晴らしくいいのだった。If I were...はレオン・ラッセルも歌っている。これらの曲以上に驚いたのは、ニコがファースト・アルバムの「チェルシー・ガール」で歌っている「レニー・ブルースに捧ぐ」がこの人の曲であることを知ったことだった。本人の歌は最近になって初めて聴いたのだが、彼の代表的な曲のいくつかは随分前からいろいろなところで繰り返し聞いていたのだった。