CD

浅川マキの10枚組自選作品集というセットが、限定再発された。全てのアルバムに興味があったわけではないが、「裏窓」「ライヴ 夜」「ONE」が入っているので、購入した。三作品とも、いずれもLPは持っているので、聞くことはできるのだが、1980年のアルバム「ONE」をCDで聞いてみたかった。裏ジャケットに「デカイ音で聴けよ」と書いてあるし。
「ONE」に入っている「午後」と「都会に雨が降るころ」は、彼女の歌を聴くきっかけになった曲だ。詞は全て彼女のものだが、不思議な覚醒感がある。デビュー以来の黒いドレスを着て「街の酒場と男と女」を歌う彼女のスタイルとも、ロッド・スチュアートのカバーを歌う姿でもない、ただ、知らない町を行く当てなくそぞろ歩いている、とりたてて何も歌になるようなもののない、浅川マキ風に言えば「だからどうしたっていうの」というような情景の連なりに、短いロードムービーを見るようなリアリティーがあって好きだった。
後に大きなサングラスをかけて歌うようになった一連の「現代の都会」の歌には、私にはどこか同時代的であろうと、新しいスタイルを捜す無理のようなものが感じられて仕方なく、それがライブに行かなくなった理由のひとつでもあったように思う。90年代以降は全く聞いていなかったのでなんとも言えないが、このアルバムの、当て所ないリアルさに遠大な奥行きがあるように感じられ、私には今でも斬新なのだ。

どんよりと
曇った
午後の日射しが
ウインドーにあたって、
平凡な
ツーピースが見える

「ONE」は山下洋輔のピアノがあってこそ、という感じなのだが、残念ながら私がライブに行くようになってからは、共演するステージがなかった。
先日、テレビで山下洋輔が浅川マキについて「彼女はステージのライティングから何から、全て自分の思う通りにしないと気が済まない人だった」と語っているのを聞いて、少し意外だった。彼女は自分が気に入ったと思える人には、大まかに任せてしまう人だと思っていたからだ。そうとしか思えない、ステージも多かった。
山下洋輔の、「もう少し紫色の音が欲しい」と言われて参った、という話に笑ったが、「紫色の」というと、ジミヘンではなくマキつながりというか寺山修司つながりというか、カルメンマキ&OZの「私は風」の「胸の奥深く紫の霧が流れる」も連想する。
で、四半世紀ぶりくらいにカルメンマキ&OZの「火の鳥」を聴いた。おかしな詞なのだが、ブリティッシュ・ロック的なスケール感が好きなのだ。ギターソロが少し残念なのだが。

浅川マキの世界 CD10枚組BOX自選作品集【復刻限定生産】

浅川マキの世界 CD10枚組BOX自選作品集【復刻限定生産】

閉ざされた町

閉ざされた町


心待ちにしていたサルディーニャ島の歌手エレーナ・レッダの新譜が出た。伝統的な宗教歌を集めたアルバムで、前作のような血湧き肉躍るようなものはないが、とても聴き応えのある作品だ。でも、やはり一枚宗教歌だけとなると、次第にしんどくなる。

Cantendi a Deus

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