カラス

数ヶ月前、たった一晩生ゴミの袋を玄関先に出しっぱなしにしていたために、仕事場の家の玄関付近、裏庭が生ゴミの日のカラスの待機場というか中継地になってしまった。
曜日を勘違いして、深夜帰り際に生ゴミをゴミ捨て場に持って行ったのだが、間違いに気づき、面倒なので、翌朝まで玄関先に出しておいたのだ。
朝見てみると、見事なまでにカラスに破られて中身がつつき出されていた。この日を境に、カラスが玄関先をチェックしに来る、ついでに休むというルーチンができてしまったようで、糞で汚れるは、植木鉢の草花が突き出されるは、大迷惑なのだ。カラスのヤロー、なんとか撃退できないかと思っているが、方法がわからない。
だいたい、何で植木鉢の草を抜き散らかすのか、さっぱりわからなかった。鉢植えは義母が植えていたものがそのまんまなのだが、枯れるものもあれば、手入れもしない割には春になると元気に育つ草花がある。つい最近もシクラメンが見事に咲いて、感心したのだった。
鉢に植えてある三つ葉のような形の草が、定期的に抜き出されて、玄関先に散乱しているのだが、どう考えても犯人はカラス以外にありえない。なんでこんな嫌がらせを...と思ったが、嫁に話すと、「それは草の根を食べてるのよ」と。なるほど。雑食だから何でも食べるんだな。そういえば、以前、家の近くの空掘川で、水たまり際の小石をカラスが二羽、並んで一つ一つくわえては、放っているのを見たことがある。暇つぶしに遊んでいるような様子に見えたが、あれもおそらく石の下にいる虫などを探していたんだろう。

昨日は生ゴミの日だったが、例によってそれぞれのゴミ置き場周辺にはカラスがあふれていた。屋根の上で鳴く一羽のカラスを見上げると、カラスの真上にある出窓から飼い猫が身を乗り出している。手を伸ばせば届くほどの近い距離だ。猫はカラスに手をだすべきかどうか迷っている様子で怖々手を伸ばしかけているが、カラスは全く気づいていない。
「よし、 一発頭をひっぱたいてやれよ」と思って数分見ていたが、結局その猫は踏み切れず、躊躇しているうちにカラスは飛び立ってしまった。
そもそもその猫は顔が負けていたな。以前事務所で飼っていた大食漢の猫も、少し目を離すと、ちゃぶ台の上の刺身などにこっそり手を出していたが、近くに人がいると、いつ叩かれてもいいように、顔をしかめ目を細めつつ、じわじわと手を出すのだった。
件の出窓の猫も、カラスに反撃される可能性を気にしつつ、泣きそうな顔で手を出したり引っ込めたりしていたのだが、機を逸してしまった。もうちょっとだったのに。

事務所で飼っていた猫は、かなり大きなヒヨドリをくわえて帰ってきたことがあり、大騒ぎになったのだが、もし、件の猫がカラスをくわえて家に入ったら、飼い主の家は大変な騒ぎになっていたに違いない。