ポール・ニューマン

ポール・ニューマンが亡くなったというので、追悼(?)に「暴力脱獄」を見る。彼が主演の映画ではこれが一番好きだ。最初に観たのは、十代だったと思う。昼だったか深夜だったか、テレビで見て大いに感動した。
あまりに酷い邦題だが、原題のCool Hand Lukeというのは、彼が映画の中でポーカーをやって、ブタにもかかわらずレイズし続けて勝ったことから、助演のジョージ・ケネディ演じる囚人仲間からつけられた「粋な手のルーク」というあだ名だ。これが吹き替えでは、「こいつはクールなルークだぜ」と、なにか洒落みたいになっていて意味がわからなかったが、今週ラジオで町山智浩の説明を聞いて、このHandというのが、ポーカーの手のことだと初めて知った。
彼はこの映画をアメリカ唯一の実存主義の映画だと言う。「イージー・ライダー」とか、「スケアクロウ」とか、「ファイブ・イージー・ピーセズ」とか、あの時代の映画はいずれもどこかそんなテイストがあると思うのだが、彼が唯一と言いたいのは、この映画がどこかキリスト教のアナロジーになっているかららしい。
ルークがゆで卵を50個食べてぶっ倒れている姿が、キリストの磔刑の姿だという見方は面白かったが、確かに、彼が最後に教会で「神様よ、聞いてるのか? 返事してくれよ」と問いかけるところは、イエスが「神よ、何故私を見捨てるのか」と言う場面を思い起こさせなくもない。
ポール・ニューマンの映画は所謂大作よりも、「スラップショット」や「アパッチ砦ブロンクス」などが好きだった。