アボリジニの壁画撮影行、(多分)ファイナル

今週金曜の夜から再びオーストラリアにアボリジニの壁画の撮影に出かける。おそらく何か新しい展開が無いかぎり今回が最後になると思う。今、子ども向けの雑誌に書く予定がほぼ決まっているが、それだけではなかなか続けられない。オーストラリアは物価がすごく高くて、倹約してキャンプしたりスーパーで食材を買ったりしても、魔法のようにお金が消えていくのだ。旅そのものは気楽でいいのだが、金の減り具合に冷汗が出る──。
資金さえあれば、三ヶ月くらいかけてゆっくり周遊してみたいが、どうも今後そんなに余裕があるとも思えない。というわけで、とりあえずファイナルかと。
今回は、先ず昨年5月に家族で訪れたケアンズ北方のローラの町で開かれる2年に一度のダンス・フェスティバルを観に行く。近隣の部族が子どもから大人まで、数日間にわたって踊る大規模な催事で、普段は静かなローラの町も大いに盛り上がるようだ。これを一日観て、残り三日、昨年案内をしてもらったジョワルビナのスティーブ・トゥリーザイスに案内してもらって、近隣の岩絵サイトを巡る。昨年は訪れる直前にサイクロンが直撃し、ローラ周辺の岩絵のメインのサイトが見られなかった。白いトキや馬の絵が書いてある岩、そして、この地方特有のクィンキンやラマラなどの精霊の絵が描いてある岩絵を巡る予定。さらに、スティーブの父親であり、岩絵の発見と保護に尽力した画家、パーシー・トゥリーザイスの話も聞いてこようと思う。
ローラからケアンズに戻り、またダーウィンに移動する。先ず、一昨年も訪れたがスチュワート・ハイウェイを南下してキャサリンに行き、カカドゥ国立公園の南に位置するニトミルク渓谷に。一昨年は川を遡上するツアーに参加し、岩絵もちらっと見たが、もっと奥地に天井にびっしり岩絵が描かれたシェルターがある。ヘリコプターで連れていってもらう。このエリアには放射線炭素による測定で現在オーストラリア最古の年代が出た絵があり(約3万年前)、さらに4万年前くらいに絶滅したと考えられている巨大鳥の絵も数年前に見つかったのだが、問い合わせたところ、鳥の絵は聖地とされるエリア内にあり、部外者はもとより、部族内でも限られた人しか入らないのだそうだ。前にもこのブログで書いたような気がするが、再度紹介する。Genyornisという鳥ではないかと言われているが、反論する人もあり、絵だけではなんとも言えないが、首のつき方などが特徴的なため、オーストラリアではそれなりに説得力のある説として数年前に話題になった。この動物をあしらった切手画像も貼っておく。
絶滅した動物が描かれているのでは、という考えは魅力的なので、いくつかの壁画に関してそれらしい説がある。ローラ周辺でも、絶滅した巨大ウォンバットの絵ではないかと、パーシー・トゥリーザイスが考えたものがあるが、残念ながら今は雨水などでほとんどわからなくなってしまった。彼が嬉々として話す映像が残っているが。放射線炭素測定は有機物の痕跡だけにしか有効でないので、岩絵の多くに使われているオーカーなどには使えない。炭や動物の血などが使われている場合、絵の上に何か生物が付着している場合などにしか使えない方法だが、最も確度が高いので、逆にこれ意外の測定方法で出た数値はかならずしもコンセンサスは得られない。岩絵の上の石英の結晶から推測する方法もあり、それでは4万年前という数字も出ているのだが。


その後はカカドゥ国立公園に入り、一昨年訪れた岩絵などをもう一度撮影する。一昨年は一時的にレンズの具合がおかしくなってしまったので。
次の日から二泊で、東のアーネムランドのボラデール山の麓のロッジに。ここは唯一白人が営業を認められているロッジだ。他に宿もキャンプ場も無いし、個人でアーネムランドに入る許可をとるのは難しい。丸二日、付近の岩絵を案内してもらう予定。ボラデール山の岩絵は比較的新しいようだが、見事な「虹ヘビ」の絵、壁面いっぱいに手形が押された場所などがあり、人によってはオーストラリアで最も見事な壁画の残る場所と言う。
ボラデール山から戻って、一日だけ、一昨年も参加したアーネムランド一日ツアーに再び。戻ってから再び入るのも馬鹿らしいのだが、その辺はあまり自由に行動できない。アーネムランドはオーストラリアであって、オーストラリアから独立しているとも言えるのだ。オーエンペリという集落の近くのインジャラクの山の岩絵をもう一度見て、撮影したい。あまりに多くの絵があるため、帰国してから「これは何の絵だろう」と疑問に思うものが少なくない。今回はそれについてもいろいろときいてきたいと思う。本当は周辺の場所を個人的に案内してもらおうと思ったのだが、シーズンなので、その余裕は無いと言われてしまった。
翌日、一人でカカドゥを巡り、ダーウィンからケアンズ、さらに成田に戻るという予定。
現地はネットがつながらない場所が多いが、可能であれば、日記をアップしたいと思う。