バハ・カリフォルニア3日目

今日からメインの岩絵のツアーに。朝、ガイドのエドガル・ユリシスが迎えに来た。27歳の体の大きな男の子だ。流暢な英語を話す。北に向かう。
途中古いフランスの植民地の町サンタ・ロサリアに。町並みも100年以上前の木造のものが残っている。スペインのコロニアル調の町と随分趣が違う。この町はエッフェル塔の設計者ギュスタヴ・エッフェルが設計した鉄の教会でも有名だ。ヨーロッパで一度組み立てられ、解体されてカリフォルニアに。バハ・カリフォルニアに運ぶ予定が間違ってカリフォルニアに運ばれたのだ。そこからさらに南に運ばれてサンタ・ロサリアに再建されたのだそうだ。大変な道のりだ。

「ほら、今の男、瞳が青かっただろ?」とエドガル。気づかなかった。
『フランス系の人が多いからだよ」と。
サンタ・ロサリアにはフランス系の移民が始めた古いパン屋がある。100年以上やっている店で、窯も100以上前のものをそのまま使っている。メロンパンそっくりなパンがあった。
理由はよくわからないが、この町はゲイが多いことでも有名なのだそうだ。


小さなかわいい本屋も。

サンタ・ロサリアは銅の鉱山で賑わった町だ。もう枯渇してしまって、工場も廃墟のまま残されている。港に木造の今にも崩れそうな廃墟がぽつんと建っている。おそらく荷を船に積むクレーンがついていたのだろう。最近になってカナダと韓国の合弁会社が新しい銅山を拓き、盛んに掘っているらしい。


ここでパンを買い、さらに北へ。岩絵のある山の入り口の村サン・イグナシオに。古いミッションが建てた教会がある。小さな村と聞いていたので、さぞ簡素な宿に泊まるんだろうと思いきや、えらく綺麗な旅行者向けのホテルがあった。意外。最初にここに入ったミッションが建てた古い教会がある。


昼はサンタ・ロサリアで買ったパンを車中で食べたので、それで済ませるのだと思いきや、そんなことはしないと。町の食堂に入る。もう3時なんだが。
魚の蒸し焼き料理を食べる。クリーム煮だ。これがまた旨かった。綺麗に平らげると、店の主人が「なかなかいい食べ方だな。ぜひまた来てくれ」と。
その言葉通り夕飯もそこで食べることになった。運転手は車とともにロレトに帰った。明日からはまた別の車を頼む。

エドガルとビールを飲みつつずいぶんと話した。彼はとてもいい男だ。岩絵のツアーガイドは滅多になく、シー・カヤックなどのネイチャー系のガイドがメインのようだ。
3本目を飲み始めた頃、二人ともかなり酔っぱらってきた。ウミガメの話になり、「そういえば、日本にこんな昔話がある」と、浦島太郎の話をすると、なんて不思議な話なんだ、「どうしてそんな箱を渡したんだ、お姫様は?」と。

彼の名エドガルは英語でいえばエドガーだが、「運命の槍」というような意味なのだそうだ。ユリシズはユリシーズだから気に入っているんだけど、これもオデュッセウスユリシーズではなく、キリスト教的な、信仰を守る者というような意味なんだと。ずいぶん大げさな、最初にアメリカに入ったミッションかコンキスタドレスだったらぴったりな名だ。
漢字が好きだというので、明日当て字で何かつけてあげるよ、と。

夕飯は軽く済ませようとタコスを頼むが、ぎっしりと具が入ったのが三つに、芋の付け合わせ。こんなんじゃ太って帰ることになる。