コロンビア・アマゾン壁画紀行 その5

 朝の散歩。小さな猛禽類チョウゲンボウの仲間。肉眼で見たときはわからなかったが、黒いハゲワシも。

 

 この日はSabanas del Venadoという少し離れた場所にある壁画サイトを訪れる予定だったが、初日のCerro Azulの撮影がいまひとつ心もとなかったことと、GoPro用の自撮り棒のアダプターがみつかったので、もう一度Cerro Azulに行くことにした。やはりこのサイトがこのエリアで一番重要なので、きちんと撮っておきたい。行ける壁画サイトは全部行っておきたいと思っていたが、写真を見るかぎり小規模なサイトで他の場所の絵と大きな違いは無いようなので、Cerro Azulを優先することに。

 現地ガイドは前回と異なり若い男性だった。運良く今回も私たち以外に来ている人はいなかった。壁画サイトに行く途中、リスザル、二種の猿を見ることができた。リスザルとチュルコと呼ばれるクモザルの仲間だ。サンチアゴは目がいいので、いろいろと教えてくれてありがたい。

 

 

 再びメインサイトでNodal Ninjaでパノラマ合成用の撮影。今回は三脚を置く場所を少し高い岩の上にした。かなり不安定で十分に足を開けないので、ストーンバッグをつけたが、それでも少し水平がくるう。

 360度写真、動画も撮影。長い棒を持ってきたので、上部の絵も確認しやすい。

 

 サンチアゴはGoProで撮影したくてしかたないので、彼に何度か預ける。彼は写真がとても上手い。iphoneで撮影してもらうと絶妙な角度で撮ってくれるし、操作もはやい。

 出発前に写真を見ていたときから気になっていたが、このCerro Azulのメインパネルにはブラジル北部で見た壁画といくつか共通点がある。一番目立つのは手形の中に渦巻きが描かれたものだ。以下の写真の上がCerro Azulのメインパネル、下がブラジルピアウィ州のセテ・シダデスの壁画だ。手形の中に渦を描くというのはいかにも思いつきそうなもので、様式が同じだからといって直接関連があるとは言えないかもしれない。ただ、これまでかなりの数の壁画を見てきたが、こうしたタイプは南アフリカケープタウン北部のシェルターと、オーストラリアのローラのダンス・フェスティバルでの演奏者のボディーペインティングでしかみたことがない。南アフリカのものは手の平の腹の部分だけをスタンプのようにして壁面に押したものが大半だった。ここまで似た様式というのはありそうでないのだ。

 

 

 また、このCerro Azulの足のついたす巻きのような不可思議なモチーフ(上)もセハ・ダ・カピバラの壁画に描かれる姿(下)に似ている。セハ・ダ・カピバラのものは、前身をワラで巻いた、祭の装束ではないかと言われているが、そうだとすれば、このコロンビアのものも似たものかもしれない。

 

 

 以下右はコロンビア南東部の端のKubeo族の装束の写真で、これとよく似た絵がチリビケテ国立公園にある(左)。これは壁画の専門家・ジャン=ロイク・ル・ケレックに教えてもらったのだが、上のCerro Azulの壁画の中のペンギンのようなフォルムの方に似ている。

 セハ・ダ・カピバラの絵と比較されるのは、ブラジル北東部に住むPankararu族の祭りの衣装(下)だ。こうした体をワラで巻いた異形の者、来訪神は日本にもあるが、Twitterのフォロワーから山形の加勢鳥という祭事の装束に似ているというコメントがあった。

 

 

 メインのパネルを撮った後は、2、3番目のパネルもそれなりに撮っておく。初日は頭がボーッとしていたし、いろいろミスっている可能性高いので。

 高さがあるので高い場所のディテールはなかなかわからないが、写真で細かくみていくといろんなものが描かれている。この細長い、伸び上がって並ぶ人物はいろんな形で繰り返し描かれている。両手を上げているものと、細長いものを複数掲げているものとあるのだが。

 

 

 道沿いにオロペンドラ(ツリスドリ)の巣のついた木があった。

 

 この日もCasa Piedraに泊まる予定だったが、急きょ、これまたツアー会社の都合でサン・ホセの町に戻ることに。案内されたホテルがなんとも暗く狭く、寮か病室のような部屋だった。簡素というより陰気で、昨日までの自然の中のホステルとの落差があまりに大きい。

 あれ?日程表では「サン・ホセで一番いい空港近くのホテルを用意」ってなってたはずだけど──。 まぁ、町のホテルなんて似たりよったりかなと思っていたが、シャワーヘッドもなく、ベッドにヘッドボードもない。「夕食はホテルで食べるのでいい?」とサンチアゴが言うので、ホテルにレストランがあるのかと思いきや、フロントに袋に入ったテイクアウトの夕食が届けられていて、それを部屋で食べよと。うーむ。

 ガイドのサンチアゴに連絡し、話が違うでしょ?と。彼には何の責任も無いのだが、会社に連絡してもらい、あっさり翌日のホテルを予定通りの空港の近くの良いホテルに。この旅行会社、本当に油断ならない。

 町に出てビールと軽食でもとろうと歩いていると、レストランにCasa Piedraでいっしょだったドイツ人夫婦が。聞けば同じホテルで、やっぱりあんな部屋にいたくないので出てきたと。シャワーヘッドが無いのも標準装備だということが判明。いままでいい雰囲気だったのに台無しと、全くの同意見。

 町に戻ってきたことがなんだか残念な夜だった。