南アフリカ岩絵撮影行 6日目

(一度書いたのだが、パソコンが壊れたため再び。)

今日は満を持してGame Pass Shelterへ。やはり雨降りなので本当にガイドが来るかも心配だったが、途中の道が気になる。昨日もハンドルをとられるほどぬかるんでいたが、昨夜はかなり降っていた。路面はもうすごい状態になっているだろう。車は普通の乗用車なので、ぬかるみや轍にはまってしまう可能性がある。

問題の場所に着くと車が詰まっている。見れば大きな牛乳を運ぶトレーラーが道から滑り落ちているではないか。重い車だから一度滑り始めたら止まらないだろう。大きなトラクターがロープで引っ張り上げようとしているがどう見てもパワーが足りない。幸い、トレーラーの脇をなんとか通れた。道を塞いでいたら辿り着けないところだった。

Kambergの受付に着くと昨日と同じ女性が、ガイドを呼びに行ってくれた。何はともあれ、サイトまでガイドしてくれるようで、よかった。ここで予備日をとっていたのも正解だった。

先ず、短い映画を観るが、これがなかなか良くできていた。このエリアにサン人がいなくなったのはほとんどもっぱら白人の入植によるものだ。狩場を失って放牧された牛に手を出し、そのために殺され、投獄されるという構図はフエゴ諸島のセルクナムやオーストラリアの先住民とまったく変わらない。19世紀半ばには南アから消えてしまった。現在、サン人の風習を一部受け継ぐ部族がほんの少しいるようだ。

 

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ガイドは25歳の若い子で、彼ともう1人が交代でやっているらしい。途中、滝の裏側にあるシェルターを抜ける。ヒヒの群れが雨宿りしていたようだが、文句を言いながら立ち去った。そこにも少し岩絵があったが、かなり不鮮明だった。

 

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この後は岩山の上まで一気に上がる。遠くを駆ける動物がいて、小鹿かなと思ったがなんとウサギだという。かなりの大きさだった。Game Pass シェルター周辺はフェンスで厳重に閉じられている。

サイトに入ってすぐにここの絵がいかにすごいかわかった。保存状態がいいだけでなく、絵そのものがとても良いのだ。エランドの群れとシャーマンたち、その周りに跳ねるように描かれたハンターたち。横一列に描かれたメインパネルと、その左側のスペースにはここがサン人の「ロゼッタストーン」と呼ばれる所以であるところの絵がある。

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エランドの後ろで手を当ててエランドの霊を取り込んでいるシャーマンの姿。エランドの後足はクロスしていて、死にかけていることが示されている。シャーマンの足もシンクロしてクロスしている。シャーマンの足は蹄になっており、彼が変身しつつあることが示されている。その右には完全に半人半獣になったシャーマンの姿がある。

 

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この絵は入植後、サン人がこの地にいなくなってから約100年後の1950年代に「発見」された最初の岩絵だ。このシャーマンの姿から、岩絵が彼らの生活風景を描いたものではなく、霊的な世界を表したものであることが確認された、という意味で「ロゼッタストーン」と呼ばれているのだ。

雨降りは不運だったが、一人で来れたのは良かった。気兼ねなく写真を撮って、そろそろ終わりというとき、岩から降りる際、足が引っかかって落ちる。膝を思い切り打ちつけた。

ガイドくんがびっくりしてOh, sorry と言いつつ駆け寄って来ようとしたが、「大丈夫、大丈夫」と。あまり大丈夫ではなかった。 下山する途中も足がガクっとなるたびに、oh, sorry...と。君のせいじゃないから、あんなところで転ぶ方が悪いんだから。
 
なんとか事務所まで戻ったが、これは明日の山歩きは出来そうもない。Drakensbergの南端に近いSani Passという場所に宿をとっているがこの感じではそこに行く意味もあまり無い。 連日の歩き疲れで足がぐらぐらしていたのに加えて慣れない厚底のトレッキングシューズで感覚が合わなかった。それにしても以前であればこんな落ち方はしなかったはずだ。嫌だ嫌だ、歳をとるのは。
途中、薬局を見つけて入る。膝を強打したので湿布が欲しい旨伝えると、ならこれだな、と出してきたのはゲル状の保冷剤の入った袋。これがサポーターとセットになっている。貼るものは無いの?と聞くと、そういうものは知らない、と。困った、これから何時間も運転しなくちゃいけないし、宿に冷蔵庫は無いかも、と言うと、「いいものをやるよ」と、キンキンに冷えた保冷剤をくれた。親切。 これを膝に巻き付けて、なんとかSani Pass Lodgeに着く。
受付が「明日、岩絵サイトまでのトレッキングツアー予約済みですね」と。それが…膝が…。明日の朝の状態次第で決めていい?と言うと後ろにいたガイドが「無理だな」と「岩場がある道を12キロ歩くんだぜ、諦めなさい」。あぁ...ですよね…。 いい感じのコテージなんだが、ただただ横になるしかなかった残念さ。明日一日何をしよう。前の宿のスタローンのチャンネルが恋しい。
 
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南アフリカ岩絵撮影行 5日目

昨夜からずっと雨が降っている。こちらは真夏だが、雨期で、長ければ一週間雨続きということがあるようだ。今年は雨が全く少ないようだが、天気予報を見ると、ほとんど毎日雨マークがついている。

今日はこのエリアでもっとも重要かつ絵の状態も良いとされるKambergのGame Pass Shelterに行く予定。ここもあまり詳しい情報はなかったが、現地に行けばガイドが案内してくれるとあるので、ちょっとゆっくり目に出て10時半くらいに着く。

 

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途中の道はかなりの悪路で、しかも昨夜からの雨でドロドロになっている。オフロードに入ると、一カ所ぬかるみがひどい。タイヤをとられる。

雨が降ると一気に気温が低くなり、とても夏とはいえない感じだ。東京の11月中旬くらいか? 朝は気温一桁代まで落ちることもあるようだ。

受付に行き、「岩絵を見に来ました」というと、「え?」という顔の女性。「今日は天気が悪いからやめた方がいいです」と。そうは言ってもわざわざ遠くから見に来たのだから、天気悪くても仕方ない、山歩き用の靴も雨具もちゃんとあるから、と言うと、もじもじしていて、電話をかけているが、「ガイドも今日は帰ってしまいました」とのこと。なんとあきらめの早い。明日、明日は? 明日も予備日としてとってあるから、明日はなんとか頼みますよ、と。明日も雨の予報だけど。

結局、雨が降っていても、よほどのことがないかぎり朝9時に来てもらえれば案内します、という約束になった。一抹の不安はあったが、「必ずね?」「はい、必ず」というので。そもそもこの季節は雨降りが半分なのだから、雨で中止は無いと思う。もう少し早く着いていたらたぶん行けただろう。

さて、この日は何をすべきか。昨日から泊まっている宿は鉄道の駅の近くの古い屋敷を改造したもので、部屋は別に悪くもないが、ずっといたいとも思わない。部屋にいるとたぶんテレビをずっと見てしまうことになりそうなので。スタローンばかりでてくるアクション映画専門チャンネルがある。

しょうがないので、最初に行ったGiant Castleに行くことに。さほど遠くない。

Giant Castleにも人はあまりいない。こんな日にわざわざ歩くのは予定がタイトな外国人旅行客くらいだろう。「今行けばすぐに案内してもらえるでしょう」的なことを言われたので、現地に行き、鍵が開くのを待つ。が、一向に来ない。ここは1時間ごとに開けることになっているが、どうも閉めたばかりのようで、雨の降る中、1時間近く待つことに。寒い。

 

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2時になっても出てこないので、大声で「まだですか〜? いるんでしょう? 待ってるんですけど。寒いからお願い〜」と叫ぶもしばし反応無し。

ようやく出て来たのは前回と同じガイドだった。え?また来たの?という顔。岩絵サイトでそういう顔を見るのは慣れている。パタゴニアの「手のひらの洞窟」など、三回行った。三度目にすれ違ったガイドがまるで亡霊でも見るかのような表情で私を凝視しつつ通り過ぎて行ったのを憶えている。だいたい、絵のたくさんある場所で40分程度で撮影なんて無理だ。1時間半から2時間くらい必要なのだ。

もう一度解説したからいいね、ということでいくつか気になっていたところを撮り直し、彼も今日はおしまいというので、一緒に戻る。

 

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「あなたは一人で来てるの?」

「そう、一人」

「家族は、その、一緒に寝る人はいないのか?」

などと言っているうちに受付に戻る。もう体が芯から冷えきった。

早めに宿に戻る。宿の案内を見ると、10号室の幽霊という話が。かつてここが屋敷だったとき、窓から身を投げた女性がいたそうな。「殺人か、自殺か」とか書いてある。今でも見たの見ないのという話があるようだが、この部屋はリクエストしたら泊まれる形式なんだろうか。勝手に割り振られても困るだろう。

仕方ないので、南アフリカとイギリス合作のB級SF映画を見て寝る。

南アフリカ岩絵撮影行 4日目

この日はひとつ南にある渓谷の終点にあるInjisuthiからBattle Caveに岩絵を見に行くことになっている。Battle CaveはDrakensbergの代表的な壁画のひとつなのだが、どこに問い合わせても返事が来なかった。いくつかのウェブサイトに載っていたメールアドレスに連絡し、電話番号にメッセージを送ったが、全く返事もなく、出発ぎりぎりになってようやくシャンペーン渓谷にあるホテルから返事があり、ガイドの電話番号を教えてもらった。電話でやりとりするのは苦手なのだが、仕方なくかけると、WhatsAppで連絡してくれということになり、なんとか日程もかたまった。

朝7時半出発ということになっていたが、この宿は朝食が8時からだ。受付に行き、暖かいものでなくていいから果物とかシリアルとか早めにもらえないかと頼むも、食堂に誰もいないのでなんともなりませんという融通のきかない返事。仕方ないので、近くのスーパーが開く8時まで出発を待ってもらう。

待ち合わせ場所に来たガイド氏は中学生の息子を連れて来た。「家でゲームばかりやっていて困るんで」とのこと。親の言うことはどこもあまり変わらない。彼に三脚を持ってもらうことになった。

Injisuthiまで続く道は途中から完全なオフロードになった。地図で見ると最も深く山地に入っている道だ。四輪駆動でないと無理というほどでもないが、普通の乗用車だと厳しいかもしれない。

Injisuthiはズールー語でWealthy Dogの意だという。どうしてそういう名なのかわからないらしいが。これは本来川の名前なのだが、これをキャンプ場の名前にしたらしい。

Battle Caveに行く道は景色が素晴らしいと書いているサイトがあったが、確かに。天気も雨の予報だったが晴れている。

 

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この日のガイド氏は植物に詳しい。薬草などについてもいろいろと教えてくれる。道は谷沿いのなだらかな道だ。Injisuthi川と支流を渡る。支流の脇にカワウソの糞が落ちていた。

ここはトレッキングコースとしては有名らしく、途中山から下りてくる人に多く会う。泊まりがけのトレッキングに行く人も多いようだ。崩落した砂岩の岩塊がごろごろしている。

 

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Battle Caveまでは2時間ほどで着いた。手前でドイツ人とフィンランド人の男女が待っていて、合流する。Drakensbergの岩絵サイトは基本、全て認定ガイドといっしょでないと見学できないことになっているが、Injisuthiのキャンプ場の女性マネジャーが、「後からガイドつきのツアーが行くから見学できると思う」というような感じで、入れてしまうようだ。

 

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Battle Caveはかなり深い場所にあるにもかかわらず、完全にフェンスで囲まれている。丁寧にフェンスの上には有刺鉄線さえ巻いてある。ここまでする必要があるんだろうかと思ったが、中にはかなりひどいいたずら書きがあり、無理もないと分かった。

サイトの前にまた違った色のバッタがいた。どうしてこう派手な色してるんだろう。

 

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かなり大きなシェルターで絵も多い。定番のエランドとエランドの霊を取り込んで変身しているシャーマンの絵がある。面白いのはシャーマンでドレッドヘアをしているものがあることだ。ガイド氏はドレッドのルーツなのだと言っていたが、確かサン人はかなり髪が短いはず。ドレッドにするほど長く伸びるのかちょっと疑問ではある。ドレッドにつり目の顔もあり、これがまるで「プレデター」のようだ。

 

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この場所で最も重要なのはシェルターの名前にもなっている闘いのシーンの絵だ。これは実際の戦闘ではなく、シャーマンがトリップして高次の霊的世界に飛翔する際通過する、悪霊との闘いなのだと。右下には鼻血を出して横たわっているシャーマンの姿がある。自らが見た場面を見ている自分を含めて描いているというのが面白い。どこか客観性がある。自分の霊的な旅を人に説明する機能もあったのだろう。

動物はとてもリアルなのに、人間はずいぶん抽象化した簡単な形でかかれているが、よく見ると弓矢が極細の筆で細かく色もつけて描かれている。ガイド氏は闘っている人物には弓を持たずに手で構える格好だけしているものがあり、それがリアルな戦闘の場面でない証拠でもあると言っていたが、どうだろうか。戻って画像補正したら弓が見えるかもしれない。

 

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絵はたくさんあり、なかなかゆっくり撮影できなかったが、来てよかった。特に、二頭のサイの絵が少し離れた所にあったのはうれしかった。この絵は南アフリカの壁画の写真としていろんな所に出てくるのだが、どの場所にあるのかわからなかった。

 

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帰りにガイド氏がもうひとつちょっとした岩絵サイトに寄って行こうと。男女のセックスの場面が逆さに描かれていて(よくわからなかったが)、その下にやはり逆さに描かれたエランド、その横に妊娠した女性が。不思議なことにエランドは体が逆さになっているのに顔は正位置になっている。これもシャーマンが見たビジョンなのか。このサイトは公開していないのだが、教えてくれた。名前がRock Porn Shelterとなっているので、そのままの名前で公開することもないだろうが。

 

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ガイド親子を彼らの家に近い交差点でおろし、コーヒーを飲むためにレストランに入る。彼らもピザを頼んでいたらしく、寄るというので、私もダチョウのハンバーガーというのを頼んでみた。特に癖のない肉だ。レストランには例の釣り鐘型の鳥の巣がたくさんあり、雛に餌やりをする親鳥たちで大変な騒々しさだった。

 

親子と別れる前、初めて息子が英語で話しかけてきた。ちゃんと話せるじゃないか、きみ。明日行くサイトに近いホテルに向かって高速道路に乗った。

 

南アフリカ岩絵撮影行 3日目

やはり3時過ぎに目がさめる。

朝食は8時からとちょっと遅い。あれこれしながら起きていた。朝日が山脈の岩峰にあたって美しい。ダーバンで見た猿がグループでうろうろしている。昨夜はカエルの鳴き声がすごかった。ここは池の真ん中にせり出した特別なコテージもあるのだが、あのカエルの声を聞いた感じでは、夜はかなり辛いに違いない。

 

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さて、ようやく8時になって朝ご飯を食べに...と思ってドアレバーを回すとそのまま外れて床に落ちた。外国の宿でドアノブが外れるのは初めてではない。なんとなく、突っ込んで、外に出て、もう一度部屋に入ろうとしたら、もう開かない。受付で、「ええと...ドアノブが...」と言うと、白人の壮年女性たちが「それは大変、すぐに修理担当を」と、トランシーバーで連絡。レシーバーの向こうで「すぐに行きます」と言う声が聞こえたが、外でいくら待っても来ない。もう一度受付で「来ないんですけど...」と言うと、「まぁ、なんてことでしょう」と彼女たち。再びトランシーバーで「もしもし、お客さんが待ってるんですけど?」というと、「今、ちょうど行くところなんだ」との声。あきれ顔で、「今、ちょうど行くところなんだ、そうです」と。「直してもらう間、朝ご飯を食べてていい?」と私。二人の女性が声をそろえて「もちろんです!」と。食券を持って外に出ていてよかった。これが明日だったら、ツアーに出られないところだった。

宿泊客は多いのだが、なぜか食堂はガラガラだ。皆自炊なのか? コテージには立派なキッチンがついている。普通食券をもらう朝食というのはビュッフェかコンチネンタルとかなのだが、メニューを出して来て、何でも頼んでいいらしい。珍しいので、イングリッシュマフィン・ミンスミート、を頼む。

ちょっとすると、大柄な黒人女性がばつが悪そうに「ミンスが.....」と言うのだが、声も小さくよく聞き取れなくてミンスがどうなのかがよくわからない。時間がかかるのかな? そもそもミンスって何だっけ? 

こちらに来て、黒人女性、いや、男性もとても声が小さく感じる。シャイなのか、その声の大きさが普通なのか。結局来たのはミンスじゃなくて、ベーコンが挟まっているマフィンだった。美味しかったが。

食べていると受付の女性が来て「完璧に修理しました」と。部屋に戻るとノブがガチガチに固く固定されていた。

宿を出て、近くのスーパーマーケットに寄る。入り口に黄緑のカメレオンがいた。例のゆらゆら行きつ戻りつするようなカメレオンの歩き方で、スーパーの入り口で「朝日のあたる家」を弾き語りしている兄ちゃんの歌に合わせて進んでいるような感じでおかしい。

 

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宿に行く途中に見えて気になっていた松の木を見る。大きな松ぼっくりがたくさんついている。アフリカに松なんてあるのか? 二つ三つ拾って、今制作中の木の実の本の著者二人に写真を見せると、二人とも欲しい!と。どうもフランスカイガンショウという種類で導入されたものらしい。よく見ると、近くに多く植えられているところがある。

 

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今日は岩絵を見る予定はなかった。ひとつ北側にある渓谷のDidimaという場所に岩絵の博物館というのがあって、映画などを上映していたらしいが、どうも最近閉鎖されたようだ。博物館は閉鎖されても、写真を見ると、岩絵もあるように見える。また、岩絵がみられなくても、そのCathedral Peakという山の麓の谷は風光明媚で知られ、レインボー・ゴルジュという渓谷を歩くコースはDrakensbergで最も美しいとあちこちに書いてあったので、今日は軽く歩いて疲れをためないようにしようかなと。

Didimaに着くと、やはり博物館は閉鎖されていた。レセプションのあるメインの建物も屋根をふきかえるなど、大きな改修工事をしている。「渓谷のハイキングをしたいんですが、地図とかありますか?」と受付に尋ねると、「あそこにいる山岳ガイドに聞いて」と。

その山岳ガイドの机には岩絵の写真が複数載った、岩絵サイトの案内らしきものが。「ここから岩絵を見に行くことができるの?」と尋ねると、「できますよ、今からでも行けますよ」とごく静かに言うではないか。聞いてしまった以上、行かざるをえない。彼の勧めもあり、マッシュルーム・シェルターという所に行くことにした。他にも8つほど岩絵サイトがあり、朝早く出れば複数見られるようだが、丸一日機材をしょって山歩きはかなり大変だろう。

マッシュルーム・シェルターは往復3時間ほどの場所だという。この名は検索して知っていたが、ここからガイドつきで行けるとはどこにも書いてなかった。どうしてこう情報が少ないのか。

今日はほぼ晴天に近い天気で、とても暑くなって来た。渓谷沿いの道はたしかに風光明媚で気持ちのいい場所だが、やはり機材が重すぎて結構辛い。途中、赤と青のカラフルなバッタを見た。オーストラリアの北部にいるやつと似たような色だが、腹がシマシマであまりバッタっぽくない。羽も短い。

 

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ガイド氏は英名がワイズマンで、ズールー語名の訳なのだそうだ。彼もまたとても声の小さい人だ。

マッシュルーム・シェルターの名は岩山の形状からとられたもで、よくある名前だ。シェルターのある岩山がキノコの傘のように見えるということだが、ここはそうでもなかった。絵は比較的少ない。しかも岩の間から染み出した水が絵のパネルの中央を流れ落ちているため、かなりダメージがある。かつて岩絵をクリアに見るため、写真をとるために絵を濡らすということが頻繁に行われていて、そのためにカビが生えるなどしてかなり損傷したということもあるようだ。だが、残っている部分はとても繊細で良い絵だ。

エランドの顔が優しい、とこかマンガのような目をしている。

 

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右側にはエランドの霊を取り込んで変身しているシャーマンの姿が二つ。

 

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集落にライオンが入って来て大騒ぎになっている絵もある。同じテーマの絵が昨年訪れたアルジェリアにもあった。

 

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帰りに滝のあるプールに寄る。滝といっても水がチョロチョロという程度だった。夏は本来もっと水量が多く、池で泳ぐ人も多いのだそうだ。雨が降らなくてラッキーと思っていたが、地元はそれどころではない。干ばつに近い状態で、水が枯れて牛が多く死んでいるエリアもあるという。この冬も雪が降らなかったら、来年はさらに大変だ。

 

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こちらでインド系の人に会うことが多いが、聞けばダーバンにはインド人のコミュニティがあり、かなりの人口があるようだ。

Didimaキャンプに戻り、ワイズマン氏のアドレスを聞く。彼は個人でガイドをしているらしく、客がいなければ商売にならないと。そういう人がいるのだから、もっと紹介するサイトなどがあっていいと思うのだが。このへんのキャンプ場やガイダンスをしているKZW Wildlifeという政府系の団体に何度も問い合わせたが、返事が全くなかった。トリップ・アドバイザーとかに書いてもいいかときくと是非頼むとのことだった。

酒屋でビールを買い、宿に戻り、早く寝る。明日は朝早くから歩くのでしっかり休まねば。

 

南アフリカ岩絵撮影行 2日目

時差もあり4時頃に目が覚める。朝からスポーツチャンネルでラグビーの試合をやっている。朝からラグビーは重い。

明るくなって車に荷物を入れに行くと、猿が二匹屋根の上をうろついていた。尾の長い顔の黒い猿だ。

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ダーバンの猿

昨夜は若い女性が応対したが、朝は体の大きなおばさん二人で朝食を作ってくれた。あまり暑くないがこちらは真夏だ。雨が多いはず。天気予報もほとんど雨マークがついていて、何かしら降らない日は無いという感じ。ところが、おばさんに毎日降るの?と聞くと、最近夏にあまり降らなくなっていると。昔は夏は湿気が多かったけど、今年は特に乾いてる、ダムの貯水量も3割切っちゃって、水不足だと。そうか、それは住んでいる人は困るに違いないが、私は毎日降られるのは辛いので、ちょっとほっとした。

おばさんに見送られながら、一気に北へ。高速道路は車が多い。通勤ラッシュだ。そんなに無茶な運転する人もいないが、スピードを出せる所ではかなり出す。

 

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南アフリカ高速道路

高速は有料なところとそうでない所があり、約200キロ走ったが、二回料金所があった。まだ現金払いが多いようだ。カーナビがあったからさほど迷うこともなかったが、これが地図だけだったら相当大変だったに違いない。ある程度頭に入れてからでないと出られないだろう。

高速を出て、最初の岩絵サイトであるGiants Castleへ。山に入る道も、ところどころ穴があいているが、さほど悪くない。最後は未舗装の道に入ると思ったが(カーナビも、「未舗装の道に入りますが、いいんですね?」とか言っていた)。終点までちゃんと舗装されていた。こちらのカーナビは表示は日本のものに慣れていると使いにくいが、起動すると「このナビは8ヶ月前の地図情報を元にしていますので、道が変わっているかも」とか言う。これは日本のナビにない。それと、高速道路上のスピード違反取締カメラを教えてくれる。ねずみ取り探知機のような役割もあるのだ。親切!

高速を出てDrakensbergの山へ向かうと次第に高原のような景色になってきた。どこかイギリスの風景にも似ている。羊は少ないが、ヤギがたくさんいる。牛の放牧地になっているので、入植者がかなり手を入れているのだろう。

Giants Castleは自然保護地区になっているので、大きなゲートがある場所で入場料を払って入る。その先はコテージ形式の宿泊施設があり、そこから岩絵を見るツアーに申し込む形になっている。人は少ない。

受付に行くと、自分で標識に従って洞窟まで歩いて行けと。要するに洞窟にガイドが待っているので、アクセスは自分で、ということだ。深い谷沿いの道を歩く。小川のせせらぎの聞こえる気持ちのいい道だ。気温は東京の10月上旬くらいか。日が射すとそれなりに暑いが、日陰でじっとしていると肌寒い。

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Giants Castle, Drakensberg

 

Giants Castleの岩絵はMain Cavesという名前で、Mainということは他にもいろいろあるのかなと思うが、見学できる所はここだけだ。着いてみると、厳重にフェンスで囲まれていて、鍵がかかっていた。サン人の岩絵はもっと自由に見られる環境にあるのかと思っていたが、少なくともDrakensbergはユネスコ世界遺産に登録されていることもあり、ガイド無しでは見られないように保護されている。いたずら書きも多かったようだ。

しばらく荷物を置いて休んでいると、岩の上に動物が。猫くらいの大きさで、ちらっと見た感じではブラジルで見たモッコみたいな感じのげっ歯類ぽい感じだった。ハイラックスにしては大きいような気がするが、ほんの一瞬だったのでよくわからず。(後に、やはりハイラックスだろうとわかる)

 

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フェンスの内側から声をかけられた。中に常駐しているガイドがいるのか。まだ20代半ばくらいの感じのズールー人の男の子だ。

ダーバンもこのエリアも、クワズール・ナタール州に属している。クワズールとはズールー人の地という意味で、19世紀にはズールー王国があった。ズールー戦争で敗れ、英領になり、ボーア人の領土だったナタルと合わせてクワズール・ナタルとなる。

これから見る岩絵を残したサン人(ブッシュマン)はズールー人などのバントゥ系語族の民族が北から入ってくる前、南アフリカに広く分布し、おそらく万年単位で狩猟採集生活を行ってきた。

 

どうもこの時間は見学者は私だけだ。中に常駐しているのに、フェンスは鎖のついた鍵でその都度閉めているようだ。ここまで厳重に管理しているのも珍しい。

説明してくれるのだが、なかなか英語が聞き取れない。こちらの英語もあまり通じない。予備知識があったので、だいたい言っていることはわかったが。

ここの岩絵は5000ー6000年前だと言う。これも諸説あってよくわからないのだが。なんと、実物大のサン人の暮らしを再現したジオラマ(?)が遺跡の中にある。これは珍しい。ガイド氏はサン人は大きくても身長1.5メートルくらいでした、というのだが、人形はどうみても1メートルちょっとほどしかない。日本にも来たニカウさんはどれくらいだったか。

サン人の言葉にはクリック音など、舌をつかって音を鳴らす独特な発音があるが、ズールー人の言葉にも同じタイプのものがある。ガイド君がやってみせてくれたが、なかなか難しい。

 

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洞窟というかシェルターだが、二つあり、最初の一つは絵がかなり不鮮明だった。エランドらしき動物の群れと人が描かれている。

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Main Cave, East, Giants Castle, Drakensberg

 

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Main Cave, Giants Castle, Drakensberg

かなり繊細な線でかかれている。人のポーズなども上手い。


北側のシェルターはかなり開口部が広い。ここに彼らの世界観を知る上でとても重要な絵がある。

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North Cave, Giants Castle, Drakensberg

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North Cave, Giants Castle, Drakensberg

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North Cave, Main Caves, Drakensberg

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この二つの人物像、小さな写真で見ていたときはよくわからなかったが、エランドの頭をもつシャーマン像だった。サン人にとってエランドは強い霊的な力をもった特別な動物で、シャーマンはその霊を体内に取り込むことで力を得る。二人とも複数のエランドの霊を取り込んでいる姿だという。左の人物には尻尾が二本、右は頭が三つ出ていて、体が大きくふくれあがっている。

写真を撮っていると、「そろそろ時間なんで....」と。1時間に1グループ案内しているということは、それぞれ45分とかなのだろう。それは短かすぎる。幸い私以外人がいなかったので、1時間以上いたが、ガイド氏に下から新しい客が行ったからと連絡が入った。

 

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「もう、好きに撮っていて。終わったらそっちから帰ってね」ということになり、ありがたし。それでも時間が足りない。渓谷を望むとてもいいロケーションで、洞窟までの行き帰りの道も気持ちよかった。

 

帰り道、道沿いに鳥の巣がぎっしりぶら下がっている木を見る。鮮やかな黄色い鳥の巣で、中から雛の鳴き声がする。ハタオリドリの仲間だ。メキシコで細長いネット状のオロペンドロの巣は何度か見たが、こういう釣り鐘式のは初めてだ。

 

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道にヒヒの群れが出ていた。皆、車が近づくと散って行ったが、ボスらしき大きなやつだけは腰をおろして股間をいじるなどして悠々としている。仲間に俺は車なんてさほど怖くない、というとこを見せてる感じ。

 

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保護区を出て、さらに北のシャンペン渓谷に向かう。カーナビは太い幹線道に戻らず、細い道を行くように指示する。大丈夫かいな、かえって時間かかるのでは?と思ったが、カーナビは普通効率の良い道を選ぶものだ。これまで走った感じではそんなに悪路もなかったし....と思って、言われるままに走るが、これが途中から完全にオフロードだった。穴はそれほどあいてないが、オフロードは何かとパンクの危険性があり、気が気で無い。カーナビ通りも問題ある。

ガソリンは減っていく(スタンドなど全然ない)しで、やきもきしたが、なんとか大過なく宿についたときはもう夕暮れで、大きなリゾート施設だった。広い敷地の中にコテージやキャンプ場や遊び場などがある。人の気配の少ないGiants Castleから子どもが騒ぐ声のする全く様子の違う場所に。ここの場所は岩絵サイトからは離れているが、明後日Battle Caveという岩絵サイトに連れて行ってくれるガイドと落ち合うにはいいはずと思って予約したのたが、ドンピシャだった。

Booking.comで朝食付きで一泊8000円程度のものが出ていたので予約したのだが、きっと通常料金はもっと高いだろう。とても広い部屋だった。

南アフリカ岩絵撮影行 1日目

東京から約27時間かけて南アフリカの東側の沿岸の町ダーバンに着く。エミレーツ航空でドバイ経由。ここのところドバイ経由が多い。ブラジル、アルゼンチン、アルジェリアとドバイ経由だった。感じも悪くない。夜のトランジットには無料のホテルがついてくる。空港は延々とブランドの免税店が続いてギラギラだ。人はそんなにもブランド品が好きなのか?

エミレーツは映画もいろんな国の言葉の吹き替えだけでなく、いろんな国の映画を上映している。インド映画、アラビア映画、タガログ語吹き替えのコーナーなんてのもある。ハリウッドで話題になった映画などでも必ずしも日本語の吹き替えがあるわけではない。中国語はほぼそろっている。このへんも、日本から出る旅行客の数がそれほど多くなくなっていることの証左か。

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ドバイ空港

 

ダーバンはそれほど大きな空港ではない。あらかじめ予約していたレンタカー屋でトヨタSUVを借りる。オートマ車は少ない。レンタカーはとても安く、1週間借りても小型車のマニュアルであれば、1万円強で借りられる。ただ、舗装されていない道に入るし、マニュアルはしんどいので、SUVでオートマで、保険も車両保険もかけてとなると4万以上になるが。それでも安い。ぼろぼろのランクルを1週間借りると20万円かかるオーストラリアとはえらい違いだ。もっとも本格的な四輪駆動車はもっと高いのだろうけど。

レンタカー屋のカウンターの女性がとても親切なのが印象的だった。カーナビも借りたし、あとはちょっと走って寝るだけだなと思っていたが、これが大変だった。

先ず、主要幹線道が通行止めになっていて、迂回しようにもカーナビはひたすら元に戻れと言う。ガソリンスタンドの兄ちゃんにおおまかに道をきいてある程度走って、ようやくカーナビもあきらめてくれた。カーナビは位置情報は正確なようだが、日本のもののように俯瞰で見るようになっていないので、自分がどのへんにいるのかが全くわからない。

宿は市街地にすると一通やらなにやらで、いきなりレンタカーで入ると大変なので、外れた場所にしたが、宿のあるエリアに入ってみると完全に金持ちの住宅街だ。家はみな堅牢な門で閉じられている。ゲート&守衛付きの住宅地のようなものもある。カーナビは「着きました」と言うのだが、その場所には何の看板もサインもなく、ただ鉄のシャッターが閉まっている。付近を回ってもそれらしきものは無し。完全に暗くなった。何度かあちこち入っては引き返しを繰り返してもわからない。あまりうろうろしていると通報されかねない。宿に電話をすることにした。電話は使わないで済むだろうと思ってモバイルwifiだけで来たのだが、仕方ないので、金のかかるローミングを。しかし、留守番電話になっている。

どうにも手詰まりで、近所に一軒B&Bの看板を出している家があったので、呼び鈴を鳴らして尋ねるも、インターホン越しに、わからない、もっと上じゃないかな?と。上に上がってみたが、やはりそれらしきものは無し。もう一度、B&Bの呼び鈴を鳴らして、ちょっと助けてもらえませんかと頼むと、男の子が出て来た。金持ちが自分の別荘を貸しているが、接客などはバイトがやっているのだ。彼もこの付近は全く知らないと。見つからなかったら、泊めてくれる?と尋ねるも、満室だと。

もう一度番地を細かく見ながら道を行くと、ようやくどうやら同じ番地らしき家が見つかった。小さな呼び鈴もある。そこだった。何度も前を通ったのだが、看板も何も無し。呼び鈴に名前も書いてない。そんなもんわかるか!

出て来た女性に、電話したんだけど、と言うと、ごめんなさい、おととい携帯盗まれちゃったのよ、と。何にしても見つかってよかった。疲れ果てた。

ボルネオ島をあきらめて、南アフリカにサン人の岩絵の撮影に行きます。

明日から南アフリカにサン人の岩絵の撮影に行く。

サン人はブッシュマンの呼称で知られた人たちで、かつてはアフリカ南部に広範囲に住んでいた狩猟採集民だ。南東部の都市ダーバンの北、南アフリカの中の独立国レソトの東側に南北に延びるMaloti-Drakensberg公園の中の岩絵と、ケープタウン北部のCederberg Wildernessエリアの岩絵をレンタカーで巡る。

サン人はオーストラリア先住民とならんで、最も長く岩絵をかき続けた人たちで、動物画、シャーマンの姿などは、他の先史時代の岩絵を解釈するうえで大きなヒントをあたえるものになっている。

当初、この時期にインドネシアボルネオ島カリマンタン)に、洞窟壁画の撮影に行く予定だった。ボルネオ島北東部のカルスト地形には多くの洞窟があり、夥しい数の4万年以上前に遡る岩絵が残っている。シンボルマークのようなものを書き入れた手形が数多くある洞窟Tewetはロープでクライミングしないと上がれない場所にあり、また、一作年、世界最古の動物の絵として『ネイチャー』に発表されたSalehの岩絵は、ジャングルを片道2日歩いた場所にあるなど、アクセスが難しく、素人には無理だろうと思っていたが、BBCの番組で明らかに経験のなさそうな女性スタップがロープで上がっていく様子を見て、これは行けるのでは?と現地の文化財保護局の人とやりとりし、OKをもらった。日程もほぼ決まっていた。

が、打ち合わせ最終盤になって、12月は雨期のまっただ中で激しい雨が降り、道はぬかるみ、増水して遺跡までたどり着けない可能性もあると聞かされ、急遽キャンセルした。どうも最初にやりとりしていた人とあまりコミュニケーションがうまくいってなかった。そういう事情であれば、もっとアクセスが容易な乾季に行きたいと思うけれど、いいですかという要望に快く応じてくれたので、行き先を南アフリカに変更したのだ。

普通であれば、航空券のキャンセル料がかかるか、チケットが全く無駄になってしまうところだったが、行き先のSamarinda空港が修復かなにかで使用できなくなり、先方都合で到着空港を変更してきたため、全てキャンセル料無しで済んだ。そうでなければ、運を天にまかせてボルネオに行っていただろう。

ということで、大慌てでいろいろと調べて、もろもろ連絡をして、なんとか出発することに。