JPEG/iPod

最近音楽を聴くのはもっぱらiPodでイヤホンというセットになってしまった。仕事場にちゃんとしたCDコンポはあるのだが、パソコンや外付けハードディスクのファンなどがうるさく、きちんと聴けない。自宅にもコンポがあるが、夜遅くしかいないので、なかなか聴けない。休日は娘の声によって他の全ての音がかき消されてしまうので、聴けない、と、どうしてもiPod+イヤホンという環境が増えてしまう。仕事場でパソコンの電源を落とすと、部屋の静けさに驚くのだが、さらに普段iPodで聴いているアルバムをコンポで聴くと、全然印象が違ったりするので、さらに驚く。圧縮されたデータがどの程度の「切り捨て」をしているのか詳しくは知らないが、これを小さなイヤホンで聴くと、ちょっと中音域がスカスカしたような、高音と低音に偏ったような印象になる。
新聞広告を見て、ソニーの「ちょっと値段が高いけど、音がいい」というイヤホンを買ってみた。中音域が広がり、音にふくらみができた感じがし、とても気に入ったのだが、すぐに右チャンネルから音が出なくなった。換えてもらおうとすると直り、また調子が悪くなり、直りの繰り返しだったので、「ちゃんと壊れてから」交換してもらおうかとしばらく我慢していた。無事完全に壊れ、晴れて交換してもらった夜、ちょっとした不注意から胸ポケット→洗濯機→乾燥機というコースで、カールしてグニャグニャにこんがらがった無惨な姿に。「これ何?」と言う嫁に八つ当たりするも虚しく、イヤホンの早すぎた死を確信したのだが、もしやと思ってつないでみたら、なんと生きている! よくぞ水責め、遠心力責め、高温責めを生き抜いた、偉いぞ、と、コードが焼きそばのようにフニャフニャになってしまったイヤホンにさらなる愛着がわいたのだが、やっぱり、同じアルバムをCDで聴くと音が違うな、と思う。さらにいえば、CDもまた、大きな「切り捨て」を行っているのだが。
中間調の厚みがなく、高低に重点が置かれすぎる傾向は、デジタルの画像データも同じだ。仕事がら毎日写真データを扱うが、どうしてもコントラストを上げ気味になる。液晶モニタに換えてからは一層この傾向が強まってしまった。そうしたほうが、デジタルの環境では綺麗に見えがちなのだ。これが印刷になるとまた違って見えるので、結果が出てから反省することも多いのだが、モニタを見ている時間が圧倒的に長い環境に目が慣れてしまっている。画面では、エッジが立った画像の方が、一見、見栄え良く見えるので、デジカメ画像などのネット上で流通する画像には、そうしたタイプのものが圧倒的に多い。
また、現在ネットで扱われている画像は情報を間引いた、圧縮されたJpegデータがほとんどだ。72dpiで画面で見ているときは、それなりにクリアに見ているような感じになっていても、プリントするとボケボケのガタガタになるので、いかに、ディスプレイ上で見る環境が階調に乏しい、粗いものであるかが実感される。
私のような年齢の人間はともかく、小さなころからこうした「間引かれた」音や絵に囲まれて成長する人間の感受性はどのようになるのか、気になるところだ。