ヴァルティナのライブDVD

フィンランドのバンド、ヴァルティナのDVDを買った。そろそろ新譜が出ているのかなと、オフィシャルサイトを見たらば、新譜も出ていたし、DVDも出ていた。サイトから直接paypalで購入した。これがなかなか楽しいDVDだった。
DVDは買っても一度見るとそれきりになってしまうことが多く、もったいないのだが、このバンドはどんな感じで演っているのか、是非見てみたかった。
ヴァルティナはフィンランドのカレリア地方の民族音楽をベースにしたバンドだ。カレリアはフィンランドの南東寄りのエリアで、長くロシアとスウェーデンという二つの強国の脅威にさらされてきたのだという。現在でもカレリア人が住む土地の一部はロシア領だ。ヴァルティナは元は十代の男女総勢二十数人による地域の高校生の民族音楽同好会のようなものだった。中心になっていたのはカーシネン姉妹だが、彼女たちら数人が音楽大学に進み、後にカレリアの民族音楽を現代的にアレンジし、さらに異文化の音楽的手法も加味したエスニックサウンドのプロのバンドとして再開した。独特な抑揚と響きのある言葉を四、五人の女性ボーカルが早口で歌いまくる迫力あるスタイルは唯一無比といった感じで、初めて聴いたときはとても新鮮だった。Selenikoという92年のアルバムを最初に聴いたのだが、一時、中毒的にこればかり聞き、当時2歳くらいだった娘もデタラメのフィンランド語で歌いまくっていた。ボーカルの魅力だけでなく、曲のアレンジ、楽器の使い方がまた良く、土臭い民俗歌唱と現代的な音作りがとても上手く融合していて、聞き飽きない魅力があった。
バンドはワールド・ミュージックのアワードを受賞するなどして、世界的に評価されるようになった。メジャー・レーベルに移るが、バンドの中心であったカーシネン姉妹の姉が抜け、音作りが変わっていった。全体に曲調がタイトというか直線的になり、早口でユニゾンで歌いまくる手法は強く押し出されてはいるが、どこか奔放さを失ったように感じた。曲のテーマも雰囲気もミスティックなものが多くなっている。アイルランドや北欧のバンドにありがちな傾向だが、このバンドに関してはそれがプラスであるとはあまり思えなかった。ヴァルティナというのは機織りに使う糸通し(縦糸の間を滑らせるもの)のことらしいが、機織りをしながら女たちがかしましくお喋りをしているような陽気さ、歌うことの楽しさ、活気に溢れているのが、私にとってこのバンドの最大の魅力だったのだが、どうもその良さが薄れてしまったような...と、不満ばかり書くとつまらないバンドになっちゃったみたいだが、決してそういうわけではない。良いことは良いのだが.....。実際、大方の評価は私と真逆のようだし。まだ新譜を聴いていないことだし。
DVDは最近のライブと古い映像集のカップリングだったが、面白かったのは古い映像だった。高校生バンドだったころの映像から、プロデビューして緊張しまくりのステージ、あか抜けない田舎のコーラスグループのような姿から、外国にツアーに出るようなプロのバンドらしい姿にルックスも変化していく課程が可笑しい。既に脱退したカーシネン姉サリの様子が非常に印象的だ。他の歌い手も盛り上げつつジェスチャーたっぷりに嬉々として歌う様を見ると、彼女がバンドにとっていかに大きな存在だったかがよくわかる。現在は妹のマリとブズーキ奏者の夫婦が中心になっている。妹もステージでは姉に劣らず陽気かつエネルギッシュなキャラクターにみえる。今後もこの陽気さに期待したい。(映像を順を追ってみていくと、妹のマリがいかにコロコロに太っていったかもよくわかる。)

ヴァルティナのアルバム解説・カレリアについては以下のサイトに詳しい。三度来日しているようだが、残念ながら私が知ったのはその後だった。もう一度来て欲しい。
http://www.geocities.com/CollegePark/Union/9839/Varttina/V-tobira.htm
http://www.tongariyama.jp/weblog/2005/01/vrttin1.html


アイタラ    Seleniko