メキシコからコスタリカ

グァナファトを最後にメキシコを離れ、コスタリカに向かった。
ちなみに、グァナファトで時間に余裕が出来た人で、メキシコの民芸が好きな人には、近郊のサンミゲール・デ・アジェンデという町が楽しい。車で2時間ほどかかるが、オアハカ以上に良質な民芸品屋が揃っていて、古い仮面、祭りの衣装、織物など、他ではなかなか見られない物を扱っている店が複数ある。買わずとも見ていて飽きない。『ロンリー・プラネット』にも「メキシコで最も良質な民芸品が揃っている町」という記述がある。


コスタリカでは首都のサン・ホセは早々に離れ、南のパナマ国境近くにあるコルコバード国立公園に向かった。コスタリカ最後の秘境と呼ばれるが、「秘境」とは言っても、子連れの我々が行けるくらいだから、行くこと自体は大して困難ではない。10人乗りくらいの小さなプロペラ機に乗って、滑走路だけの「空港」に降り、4WDで増水した川を渡り、最後はボートで1時間ほど海を渡る。公園一帯には道路がないのだ。

宿泊はマレンコ・ロッジという、この一帯では最も古い有名なロッジだった。木造のロッジが20数棟ある。ロッジの窓には網戸が入っているが、戸がついていない。真夏とはいっても、深い森林のせいで気温が抑えられているため、夜、土砂降りの雨が強い風を伴って降るとちょっと寒い。ベッドの上には蚊帳が吊ってあったが、蚊はほとんどいなかった。夜ちょっと寒かったことを除けば、楽しい宿だった。天井に張り付いている馬鹿でかいヤモリがこれまたでかい蛾をバクバク食べる様子を見ながら寝る毎日だった。
雨期のため全体に天候が優れなかったが、国立公園を1日歩いた日がずっと雨降りで、時に激しく降り、増水した川を娘をおぶって腰上まで浸かって渡らねばならなかったのはちょっときつかった。現地の旅行代理店が「雨合羽などは全て用意してます」というので、なるべく荷物を減らそうと持っていかなかったのだが、これがいいかげんな情報で、現地にそのようなサービスはなかったのだ。結局、一日中ずぶ濡れだった。

ガイドのホセが「日本人客のガイドを何度かしたことがあるけれど、みんなちょっと用心深すぎるっていうか、いろんなことを恐がりすぎなんだよね。雨具とか虫除けとか、毒蛇が出るんじゃないかとか......重装備でいろんなことを気にしていて、あまり環境を楽しめていない感じだね。その点、きみたちは実に解放的でいいね!」と、頭の先から足の先までずぶ濡れになっている我々を見て言うのだった。──それは違うんだよホセ君。好きでずぶ濡れになってんじゃないんだよ。雨合羽を借りる予定だったんだよ....。
娘の合羽は持ってきていたが、暑いからと胸元を開けたりしていたので、やはりずぶ濡れだ。どうせびしょびしょなので、ちょっと寒かったが、雨期の茶色く濁った川で泳いだ。帰った後、案の定嫁が風邪をひいたのだった。
宿のガイドはお約束で、これで熱帯「雨」林という名前の意味がわかったでしょ、というのだ。
連日結構ハードだったが、様々な珍しい動物を見たが、感激したのはコンゴウインコとオオハシだった。また、感激というにはあまりに動きに乏しかったが、宿の近くの木にぶら下がっていたナマケモノも。