J.J.グランヴィル展

気分転換をかねて、通勤途中、練馬区立美術館に「鹿島茂コレクション1 グランヴィル 19世紀フランス幻想版画」展に寄る。当初4月3日までの予定だったが、地震の影響で10日まで延長されている。

J.J.グランヴィルは19世紀前半のフランスで風刺画・挿絵画家として活躍した人だ。独特な鳥獣戯画、奇想画で知られるが、同時代のドーミエなどと比べると知名度は低い。だが、唯一無二の個性をもった画家といえる。
鹿島氏はグランヴィルの絵を見て、「人生が変わり」蒐集を始めたというが、本当に凄いコレクションだ。個人でこれだけそろえている人は本国にもいないのではないだろうか。本の挿絵を額装したものと、書籍を開いた形で展示したものがあり、中には、大変美麗な特装本もあり、見応えがあった。

私は20年前に駆け出しの出版社員だった時分、鹿島氏に『もうひとつの世界(Un Autre Monde, 1844)』という本を見せていただいて、すっかりその本の虜になってしまった。これは挿画というより、グランヴィルがかいた奇想天外な絵にストーリーを付けたような本だ。副題は「変容、幻想、化身、上昇、移動、探検、遍歴、周遊、滞在、宇宙創世論、幻影、夢想、悪ふざけ、冗談、気まぐれ、変身、動物変身、鉱物変身、輪廻転生、死後神格化、その他」とある。長らく忘れられていた画家だったが、シュールレアリストによって、「再発見」されたのは、この本の絵によるところが多い。トランプの戦いの場面など、ルイス・キャロルの「アリス」も確実にこの本の影響を受けている。
オリジナルは手が出ないが、1963年に復刻された本を購入した。マックス・エルンストが一枚の絵と巻頭文を寄せている。



以下に、この本の全てのページがアップされている。
http://www.flickr.com/photos/bjacques/sets/72157622452294268/?page=4

グランヴィル―19世紀フランス幻想版画 (鹿島茂コレクション)

グランヴィル―19世紀フランス幻想版画 (鹿島茂コレクション)

花の幻想

花の幻想