タッシリ・ナジェール壁画紀行 その3

この旅は、夜明けとともに起床、朝日が昇ったら朝食、6時半までに荷造りしてラクダが積めるように、というルーティンだ。この日も5時半くらいに起き、荷造りをした。今回は雨が降るかもというので雨具を持ってきたし、ソーラーパネルも持ってきた。このために昨年よりも荷物が増えて同じバッグに収まりきらなくなったので、荷造りが大変なのだ。

 

 

キャンプ地から台地へと歩いていくと、たしかに途中何ヶ所も道が崩れている。ただ、それがなくても本当にここを自動車で通る予定だったのかと疑いたくなるような細く、凹凸の多い道だ。通ったことがあるからそういう計画だったのだろうけれど──。

台地への上がり口Akba Assakaoまで10キロくらい歩く。結局、標高差500mを歩いて上がることになったわけだが、昨年よりは勾配が緩やかではある。ラクダも岩場を上がっていく。

ラクダの足先は丸く大きく、柔らかく見える。二本指で、フタコブラクダよりもヒトコブラクダの方が足が丸く大きい。ロバの細い足先と比べてしっかりと地面を掴めるんじゃないだろうか。

ロバは悲しげな恨みがましいような目をしているが、ラクダはまつ毛が長く、口角が上がっていることもあり、なんとなく陽気に見えるのだ。重い荷物を積むときも全く抵抗しないし。

今、世界で一番野生のヒトコブラクダが多いのはオーストラリアだ。若い女性がラクダとともにオーストラリアを横断する、実話をもとにした映画「奇跡の2000マイル」では、主人公は、発情した野生の雄のラクダほど恐ろしい動物はいないから気をつけるようにと言われる。もし遠くからこちらに向かって走ってくるラクダを見たら、迷わずに射殺すべしと。実際それで恐ろしい目にあうことになるのだが──。タッシリの穏やかなラクダ隊を見ていると、そんなふうになるなんてとても想像できない。

 

 

本来の日程表では、この日は台地の上に上がってからさらに9キロほど離れたOuan Mellenまで行くことになっていた。9キロといっても、これは主催者のアンドラスが直線距離を測ったもので、実際に歩く距離は1.3-1.5倍くらいはあるはず。車で上がることができなかったため、予定を見直さざるをえなくなった。

台地に上がったときにはもう陽が傾きつつあったため、ラクダが食べられる草がある場所まで歩き、キャンプをはる。