タッシリ・ナジェール壁画紀行 その14

Tan Zumaitakにキャンプし、早朝から再び見事な壁画のある大きなシェルターに向かう。壁面は太陽と反対方向に向いていたので、かなり暗かったが、一部穴が空いているところがあり、そこから光が入ってきて、だんだん全体がいい色になってきた。

三脚を持ってきたので、ここで初めて壁画撮影に使う。でないとISOが1200とかになってしまうので。

本当に素晴らしくいい壁画だ。ずっと見ていて飽きない。体にドットでつけられているのは瘢痕文身だろうか。頭の飾り、首につけた飾りは何で出来てるんだろうか。

 

 

左の人が腕や手首にかけている白い房状のものは何だろうか。この二人、そして右向きで棒のようなものに手を伸ばしている人には細長い乳房がついている。ということは、最初の並んでいる二人は男性だろうか。

 

 

小さな人に手をのばす女性像がある。狩猟採集民の時代の壁画のモチーフは妊婦のものがとても多い。ここに描かれている女性たちもお腹が少し膨らんでいるようにも見える。小さな人は、赤ん坊というより、これから生まれてくる命の象徴、魂みたいなものかもしれない。

 

 

この左側の動物はヘタすぎてなんだかわからない。中央と同じバーバリー・シープだろうか。右端のクラゲみたいなものも、何なのかわからないようだ。この二つはタッチからして違うときに描かれたものだろうけれど、どちらも狩猟採集民の時代だ。

 

 

三脚を使っての撮影がひととおり済んで、別の場所に撮影に行くが、すぐにここに戻って、またパノラマ用の撮影をした。

マイケルも当然三脚を使ってハッセルで撮影。ディテールをプレビューで見せてくれて、すごいでしょ、この解像力、という顔をする。確かにすごい。

 

念願叶って嬉しかった。もっといても飽きなかったと思うが、出発。前回も訪れたTamritに向かう。谷に降りると衝撃的なものを目にすることになる。

 

 

タッシリの固有種で樹齢2000年を超えるといわれるイトスギの巨木が何本も完全に立ち枯れてしまっている。部分的にではない。完全に枯れてしまっているのだ。

 

 

ここ半月ほどの雨で、谷には細い川が流れていたが、今夏はかなり気温が高かったようだ。土中の水分が完全に失われてしまったのかもしれない。今年の8月の衛星写真ではまだ緑色に見える。その後で枯れたということか。wikipediaによれば、233本しかない絶滅危惧種だ。気候の極端化はさらに進むと考えられているので、絶滅が心配される。

なんとかこの川の水で復活してもらえないだろうか。

 

前回も見たイヘーレン様式の絵を再び撮影。赤いドットは全て羊の頭の部分。昨年書いたブログでは戦闘場面としたが、槍を振り上げる姿など、イヘーレン様式定番のライオン狩りの場面で、ライオンの部分が消えていてわからないのかもしれない。振り下ろした槍の先にあるのは、転んでいるような形の人の片足なのだが、この倒れた人を皆で追い回して殺そうとしている場面というのは、あまり考えにくいような気もする。

 

 

Tamritで昨年見ていないエリアがあったため、しばし探索。双頭の蛇の絵を探すが、なかなか見つからない。ようやくとても低いシェルターの、ひさし部分の裏側に見つかる。これは舟なのか、蛇なのか、ということで議論があるようだが、アンリ・ロートは舟だと解釈していたようだが、同じモチーフのものを見ると、舟ではないことはわかる。両端に頭がついていて、両方に向けて弓をひいたり、手を上げたりしている人たちとセットで描かれているからだ。(画像補正)

 

 

ロート隊の複製画にもある、象が三頭かたまっている絵も見る。象の絵で、こうした動きを感じさせるものは初めてみた。上にあるキリンの首の模様みたいなのはなんだろう。(画像補正)

 

 

ひととおり、エリアを探索し、さすがにもう見る所はないかなとなっていたとき、ガイドのブーバカーが来た。戻りが遅いので、様子を見に来たんだろう。彼はいつもこうしたタイミングですっと現れる。

「こっちのは見たのか?」と。そこはちょっと岩陰に隠れていて、入り口がはっきりせず、見落としていたエリアだった。入ってみると数多く壁画のあるシェルターが。トゥアレグのガイドはマイナーな壁画の場所はそんなに詳しく知らない人が多いようだが、さすがに彼は経験が長く、いろんな場所を知ってるんだろう。

 

 

明日は最終日。台地を降りていくだけだ。