パリで2日とっていた。まずちょうど「先史時代マニア」という企画展示が行われている「人間博物館Musée de l'Homme」に。地下鉄網がややこしいが、Google Mapで現在地からの経路表示をすると乗り換え駅も含めて詳細に表示されるので迷うことはない。地下鉄は日本と同じでチャージするICカードがあるが、二日しかいないので切符を買う。パリ中心部の地下鉄は2.15ユーロ均一。350円を超えているので、乗る距離によってはちょっと高く感じられる。ただ、他のものの物価が日本の倍2-3倍だということを考えると、安めだといえるかも。これがオリンピック開催期間中は倍額になるらしい。
人類博物館は、生物学的な人類に関する展示と、文化人類学的な展示が同居している、ちょっと不思議な設計になっていた。日本でいうと、上野の科学博物館と大阪の民族学博物館が融合したような感じ。とくに印象的だったのは、入場してすぐの「ホモ・サピエンスとは何か」という感じの場所で、蝋人形の解剖模型や結合双生児の骨格標本が置かれていたこと。昔のリアルな蝋人形の解剖模型は美術品として多くのファンがいる。初めて間近に見たが、生々しくもものすごく精緻にできている。
フランスなので、民族学的な展示がたくさんあるのかと思いきや、それは別の博物館があるということを帰国後に知った。ろくに調べもせずに行くからそういうことになる。
レスピューグのヴィーナスなど、氷期の遺物もいくつか展示されていた。
目的の「先史時代マニア Pre-Histo Mania」の企画は、先史時代の壁画そのものに関する展示かと思いきや、先史時代の壁画を調査した初期の研究者や現地で壁画の複製画の作成を行った画家たちに関する展示だった。フランス国内の氷期の洞窟壁画、サハラやジンバブエ、ニューギニアの壁画など、多くの複製画が展示されていた。
壁画の複製には多くの女性画家がかかわっている。アルジェリアでスカートをはいて縄ばしごに乗って絵を写している様子など、本当に大変な作業だったんだなと実感される。下はElizabeth Pauli とKathalina Marr
こんな態勢で....。これはElizabeth PauliとMaria Weyersberg。どちらがどちらかわからないが。
壁画の複製画は実物大で見るとなかなか迫力ある。パソコンの画面では何度も見ていたアンリ・ロート隊のタッシリ・ナジェールの「白い巨人」のパネルの複製画もとても見ごたえあった。
驚いたのはロート隊の複製画作成の映像で、壁面をスポンジで濡らしている場面だった。スポンジで「濡らして」とかいうレベルではない。ゴシゴシこすっている!
人類博物館を出て、次に博物標本の店デロールDeyrolleに。福音館書店「たくさんのふしぎ」シリーズの傑作・今森光彦の『好奇心の部屋 デロール 』で知ったが、本のタイトルどおり、標本屋というより、ヴンダーカンマー的な作りになっている。
石の標本も展示・販売されていたが、それほど面白いものはなかった。デロールは2008年に火事にあっていて、かなりの標本が燃えたという。火災にあう前の姿も見てみたかった。
さらに自然史博物館に向かう。ロジェ・カイヨワの石コレクションの部屋があるはずだ。パリで一番見たかったのがこの展示だったが....なんと、部屋が無くなっている! カイヨワの石として展示されているのはほんの数点だ。
受付の人にこれこれしかじかの展示が無くなってるんですが?と尋ねると、あぁ、今半分くらい特別展示に使われているから、そのせいではないでしょうか、と。
そうなのだ。鉱物学の資料館の半分が「ロストワールド」と題した古生物の展示に使われていて、鉱物の展示が半分になっているのだ。これは一時的なものなんだろうか。カイヨワの石が置かれていた状況を見ると、他の鉱物学者などといっしょに展示するセットが出来上がっていて、これが特別展示が終わったらばらして元の部屋を作り直すとはとても思えない。きっと鉱物館の入場者がそれほど多くないので、子どもを含めて人を呼べる企画に使うためにスペースの使い方を見直した感じがするのだ。
それに、カイヨワの石を紹介するのに、風景石がひとつもないとは。菱マンガン鉱や孔雀石なんて彼のコレクションのメインではないだろう。わかってない人が責任者になったんだろう。残念としかいいようがない。
がっくり来て宿に戻った。宿のすぐ近くにコイン・ランドリーがあったので洗濯。
翌日は特にもう予定もなかったが、せっかくだからルーブルは行っておくかとチケットをオンラインで買おうとしたら、もうずっと先まで予約いっぱいだった。オルセーも完売。ポンピドゥー・センターが一枠だけ空いていたので予約した。そんなもんなのか。