東京ミネラルショー

恒例のショーに行ってきた。複数のロシアのディーラーがレインボー・パイライトが入ったノジュールを売っている。魅力的だが、ずいぶん値段が高いので我慢して通り過ぎる。

佐藤金三郎さんの店で津軽の瑪瑙と錦石を買っていると、後ろから声をかけてくる白人男性が。「もしかして、あなたは瑪瑙のコレクターでは?」という。えっ? 俺って、そんなに顔に瑪瑙的(?)な相でも出てるの?と面食らっていると、あんたはヨハン・ゼンツ氏の本『Agate II』に出てるだろ、私も出てるんだと。傍に日本人の若い奥様がいて、ピンときた。以前トム・レーンから話を聞いたことのある瑪瑙のコレクター、デイヴ・ヒグネット氏だった。それにしてもよくまあ顔がわかるもんだ....と大いに感心。昨年もショーに来て、北海道の枝幸産のプルーム・アゲートを買ったという。
彼と会うのも初めてだし、間接的にコンタクトしたこともないのだが、アメリカの瑪瑙好きの中では有名な人なのだ。
話を聞くと、私が持っている瑪瑙のいくつかは彼が二、三十年前に採取したものらしい。石は旅をするのだ。ミシガン州の瑪瑙コレクター、マーク・ボッシュから買ったスコットランドの瑪瑙のもう半分が、数年後にスコットランドの瑪瑙コレクターロビン・フィールドから届いたことがある。彼が採取した瑪瑙で、昔半分を売ったのだが、彼はマークは知らないという。「何人の人の手に渡ったかわからないが、半分に切って手放した石が、長年はるばる世界を旅してあんたの所で再び出会うとは、二つは求め合っていたのか、なんと神秘的な!」と、彼は喜んでいたが、それだけ世界に瑪瑙コレクターは少ない、ということかもしれない。どこか村社会的な狭さがあるのだ。

最近は不景気なのであまり石を買わないように自重していたが、最近ebayでチェコのセプタリアを売っているオランダ人がいたので、いくつか購入した。このセプタリアは画像は見たことがあったのだが、ネット上で売っている人がいなかった。なかなか面白いのだが、いかんせん大きく、重い。驚いたことにコーヒー豆か何か運ぶような大きな木箱に入って、フタが釘で閉じられていた。真ん丸の方は、どこかアタナシウス・キルヒャーが描いた地球の断面のようなのだ。



開場して間もなく、「会場に窃盗グループが入ったという情報が」というアナウンスが流れた。こんなのは初めてだ。確かに、100万円を超えるアンモライトなど無造作に置いてあって、こんなに警備の緩い場所はないかもしれない。アンモライトは割っても宝飾用原石として価値が高いから、足がつきにくいかもしれない。

三葉虫の標本の写真を見つつ、真贋を評価している人がいて、しばし傍らで聞き入ってしまった。「この標本は全体にクリーニングの技術が低いですね。それに対して、このトゲの部分だけが不自然に鋭い。間違いなく後からトゲをつけた偽物でしょう」というような淡々とした評価が説得力あるもので、面白かった。化石は詳しくないが、ネット上にはおかしな石がたくさんある。特に中国の業者が売るものの中にはかなり怪しいものがある。昨年はブドウの房のような形状の玉髄の標本がたくさん出回っていたが、ほとんどが明らかに人工的につくられたものだった。瑪瑙を削り出すのはかなり大変な手間だと思うが、こんな価格で労賃に合うのかと、変なことが気になってしまった。今ebayで出品されているこの中国産の菊花石なども、あまりに稚拙な偽物で笑ってしまう。