ショーヴェ洞窟壁画

新百合ヶ丘ヴェルナー・ヘルツォークのドキュメント映画『世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶』を観に行く。ヘルツォークは『アギーレ神の怒り』『ノスフェラトゥ』など好きな映画の多い監督だが、今年はドタバタしていたので、この映画の公開を知らなかった。
南仏の洞窟で発見された紀元前3万年の壁画群を3Dで撮影したものだが、3D上映はすでに一通り終了していて、現在35ミリフィルムに焼いたものを全国何ヶ所かで上映している。
1994年に発見されたショーヴェの洞窟壁画は長く人類最古の芸術とされてきたラスコー、アルタミラなどよりもさらに1万数千年も遡るものとみられている。馬、牛、サイ、ライオンなどの動物が生き生きと素晴らしく卓越した表現力をもって描かれていて、動物の動きを輪郭をずらし、ダブらせて描くことで表現しているとみられる、未来派?とも言えるような技法なども非常に面白い。ちょうど港千尋著『洞窟へ』を読み、ショーヴェ洞窟の壁画について詳しく知ったばかりだったので、ちょうどいいタイミングだった。
石灰岩の鍾乳石の表面に細かな方解石の結晶がコーティングされた洞窟内部の造形も面白く、3Dで観られたらと少し残念ではあった。
また、どうも全体に映像の解像力が低く、ぼやけている印象があり、これが非常に制限された撮影環境から来るものなのか、3Dをフィルムに落としたことによるのかわからず。また、意図的に彩度を落とした映像で、なんだか70年代の映画を観ているようでもあった。だが、原始美術に関心のある人は一見の価値がある。来月DVDも出るようだが、洞窟壁画はあえて光の全く入らない空間を選んで描かれたものなので、テレビで観るよりは、劇場で大きなスクリーンで観る方がよりリアルに体感できるはずだ。